いまこそ <健全な社会> へ ⑤

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 ここでまず主張したいのは、新型コロナウィルスのパンデミックが「危機」と呼ばれるものになった仕組みとそれが内包する様々なリスクや不確実な未来を際には、パンデミック発生以前にこれらの社会的・生態学的・疫学的・安全保障上のリスクが、グローバルな複雑性の中に蓄積されていたという事実を忘れてはならないということだ。

 そして、<コロナ以後>の社会の展望を考える際にも、このグローバルな複雑性が持つ多元的なフィードバック効果を考えておかなければならない。

 特に留意すべきは、様々なリスクに対する政治の反応だ。政治学者コリン・クラウチが指摘するように、この間、先進産業社会の政治は、デモクラシーからポスト・デモクラシーへと変容した。巨額の選挙資金を獲得するために、また経済成長を追求するために、グローバル経済を支配する一部の巨大企業の圧力に追従する政治が行われた。その結果、社会的リスクと生態学的リスクに対する有効な政策は講じられず、格差と地球環境破壊は一層深刻化していった。また、疫学的リスクに対しても、財政緊縮政策の下で十分な医療体制を整えることができなかった。

 そして、安全保障上のリスクに関して、いわゆる「テロとの戦争」の名の下で国家は監視システムを強化、旅行者や移民に対する入管の厳格化、国内の外国人居住者に対する(人種・民族・宗教を基にする)監視、そして社会のいたるところへの監視カメラの配備を進めていった。

 亀裂が深まる社会の中で、居場所を失った民衆は、一方では既成権力に対する不満を蓄積させ、他方では移民や難民をスケープゴートにする排斥運動やヘイトスピーチを展開していった。この社会的混乱の中で左右両派のポピュリズム運動が世界各地で台頭したが、特に右派ポピュリズムが優勢な米国や英国では、排外主義的で自国中心主義的な権威主義体制が誕生し、第二次世界大戦後の国際協調の枠組みが大きく揺らいだ。新型コロナウィルスは、このような政治的混乱期に発生した。

2020年9月20日 (日)

いまこそ <健全な社会> へ ④

続き:  J・アーリが明らかにしているように、脱組織化した資本主義のグローバルな複雑性を構成しているのは、人・モノ・情報の移動(モビリティーズ)の絶え間ない流れ(フロー)だ。グローバル化した世界には一...

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2020年9月19日 (土)

いまこそ <健全な社会> へ ③

続き: ● 複雑化社会の罠と新自由主義  これらの一連の出来事は、直接的には一国レベルの社会制度の設計と統治の失敗として捉えうるとはいえ、その背景には、1980年以降、産業的生産様式の地球規模の拡大を...

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2020年9月18日 (金)

いまこそ <健全な社会> へ ②

続き: □ 危機へのプレリュード――グローバルな複雑性と新自由主義 ● 「前代未聞」のコロナ危機  今回の感染症が「危機」と呼ばれる状況を世界中で引き起こしているのは、それが過去40年間に展開された新...

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2020年9月17日 (木)

いまこそ <健全な社会> へ ①

中野佳裕(早稲田大学地域・地域間研究機構次席研究員)さんの小論文より コピーペー:  新型コロナウィルスは、感染症の世界史に共通して見られる特徴を多く備えている。たとえば今回の感染症は、過去に発生した...

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2020年9月16日 (水)

Clinical ~発達不全と低下~ ⑤

続き: おわりに  筆者(弘中)は長年にわたり、食べる機能に障害を持つ障害児者の摂食嚥下障害の診断・評価・治療に携わってきた。障害児者の摂食嚥下障害への考え方の基本は、正常な発達にどれだけ近づけるかが...

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2020年9月15日 (火)

Clinical ~発達不全と低下~ ④

続き: 3. 高齢者対策 ~口腔機能低下症~  口腔機能低下症の支援は、機能低下が疑われる高齢者に行うため、基本的には指示に従える方が対象となる。又、口腔機能低下症は、明らかに口腔機能が低下した者であ...

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2020年9月14日 (月)

Clinical ~発達不全と低下~ ③

続き: 2. 口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方  口腔機能発達不全症は、正常な定型発達児がし得る機能を獲得できていない状態であり、日本歯科医学会は平成30年3月に「口腔機能発達不全症に関する基...

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2020年9月13日 (日)

Clinical ~発達不全と低下~ ②

続き: 1. 口腔機能を評価する必要性  平成27年1月に日本歯科医学会重点研究「子どもの食の問題に関する調査」報告書が示された。平成26年6月27日~平成26年7月31日に行われた本調査では、全国の...

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2020年9月12日 (土)

Clinical ~発達不全と低下~ ①

弘中祥司(昭和大学歯学部スペシャルニーズ口腔医学講座衛生学部門教授、同大学口腔ケアセンター長)の小論文を掲載。コピーペー: はじめに  我が国は着実に人口減少が進んでおり、その中でも少子高齢化が加速し...

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«人間と科学 第315回 体と心の5億年(5)―チャールズ・ダーウィンの『種の起源』 ③