Clinical 早期発見!口腔癌を見過ごさないために知っておくべきこと ①

金子忠良(日本大学歯学部口腔外科学講座教授)さんの研究小論を載せる コピーペー:

 

               要 約

 口腔は摂食、嚥下、構音や味覚などの生命維持と、人間として生きていくために大切な機能を有した器官である口腔がん治療には根治性、生活の質の維持、さらに整容性も求められる。口腔癌は早期発見、早期治療により、治療期間の短縮、高い治療効果と口腔機能の維持が得られる。口腔癌患者は口腔内症状で最初に歯科医院を受診することが多い。歯科臨床医が日常診療の中で見過ごすことなく口腔癌を発見するためには、癌の特徴を理解し、癌を常に疑いながら診察することが重要。

 

1. はじめに

 

1) 発癌について ~癌とは何か?~

  癌とは制御されない細胞の増殖であり、原発部位から身体の他部位へ細胞の浸潤や転移を特徴とする疾患で、このことが悪性腫瘍とされるゆえんである。

  癌はDNAの変化により発生するが、癌細胞のDNAは小さな変異から大きな染色体異常に至るまで、さまざまで変化を含み、長時間かけて細胞内で変異が蓄積されていくため、発がんの過程は多段階とされる。癌は細胞レベルでのゲノムの疾患と考えられている。すなわち、癌制御遺伝子は正常細胞の増殖・分化抑制やアポトーシスの誘導などをコントロールしている。この癌抑制遺伝子が変異または欠失などにより不活性化した状況下において、一方では癌遺伝子が発癌因子(イニシエーター)の作用により活性化され、細胞の突然変異やエピジェネックな変異を惹起する。さらに発癌促進因子(プロモーター)の影響で、複数の遺伝子変異が長時間かけて蓄積され細胞の癌化に至る。癌は発生組織によって、その生物学的性格や特徴が異なり、細胞タイプに関与する分子レベルでの発癌メカニズムや、原発部位により転移にも違いがあるため治療も一様ではない。

 

2) 全国がん登録制度の開始

  わが国ではがん対策推進基本計画に基づき、2016年より全国がん登録制度が開始され厚労省は2019年1月に集計結果を発表した。2016年のがん新規患者数は99万5132人で、内訳は男性56万6575人、女性42万8499人、不明58人であった。制度施行前の2015年のがん登録数89万1445人と比較すると10万3687人も増加した。部位別の患者数は大腸15.9%、胃13.5%、肺12.6%の順番だった。年齢構成を調整した男女罹患率は人口10万人当たり468.8対354.1で男性が高い。一般的に気道や口腔、咽頭、食道などの上部消化管を主体とする頭頚部領域に発生する上皮性悪性腫瘍を頭頚部癌と総称して、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、鼻副鼻腔癌、外耳道癌などが包含される。2018年の口腔・咽頭がんの罹患者数推定値は、男性1万5700人、女性7300人で、全がんの約2%を占め増加傾向である。

  本稿では、顎口腔領域に発生する悪性腫瘍の総称としては、おおむね「口腔がん」を用い、上皮性悪性腫瘍である癌腫は「口腔癌」として述べる。

 

3) 口腔癌治療

  近年は口腔癌治療ガイドラインが制定され、癌治療の均てん化が図られている。口腔癌の治療成績は、ステージⅠ(早期癌)の5年生存割合は90%以上。早期の口腔癌であれば、手術や放射線治療により根治が可能で、治療による身体侵襲も軽く、摂食・嚥下・構音などの口腔機能や味覚も温存される。患者の予後や生活の質の維持を考えると、口腔癌治療後の機能障害を最小限に止め、口腔機能を温存するためには早期癌で発見し、適切な治療を行うことが重要。

 

4) 口腔がん検診

  口腔がんは早期発見、早期治療により、治療期間の短縮と高い治療効果が得られ、機能的・整容的回復が可能、早期の社会復帰が期待できる。全国において歯科医師会は自治体と連携して、早期発見のため「口腔がん検診」を実施し、がんを含めた口腔疾患に対して地域住民の関心を深め、口腔に関わるさまざまな情報を発信している。当然ながら、進行性口腔がんと口腔がん死亡数の減少を図るためにも、口腔がん検診の普及と充実が必要と考える。

 

5) 早期発見

  歯科臨床医にとっては、口腔癌の早期発見が最大かつ重要な課題だ。口腔は視覚的に発見が容易とされるが、受診や診断の遅れなどにより進行癌が多い状況は続いている。口腔癌を早期に発見することができるのは、日常診療で口腔を診察している歯科臨床医にほかならない。筆者(金子)の経験から歯科臨床医が診察において、口腔癌を見過ごすことなく早期に発見、診断するために知っておくべきことについて解説する。

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