Clinical 「低ホスファターゼ症」という病気とは? ⑤

続き:

6. HPPにおける医科歯科連携

 HPPを歯科から早期発見するためには、歯科医に対するこの疾患の啓発活動と、医科歯科連携体制の構築が重要。

 当科では、HPPに関する説明資料の配布、講演会、雑誌等への解説の掲載などを通して、歯科医、歯科衛生士といった歯科医療関係者のみならず、保護者などの一般の方々にもHPPについての啓発活動を行ってきた。その結果、地域の歯科医院から当科への乳歯早期脱落症例の紹介が増加している。

 そして、当科で精査を行い、HPPを疑う所見を認めた場合に本学医学部附属病院小児科を受診いただいている。現在、HPP患児23名(男児10名、女児13名)が当科を受診このうち9名が、乳歯の早期脱落のため、かかりつけ歯科医から当科へ紹介いただいたことでHPPの診断に至った。7名は歯限局型であったが、2名はすでに成長発達に問題を認める小児型であった。また、地域の歯科医師会の先生方のご尽力で、1歳6か月児や3歳児歯科健康診査の際に乳歯早期脱落を診査する項目が追加され、HPPが歯科領域からスクリーニング可能となった地域も増加してきている。

 歯学部・歯科大学の附属病院がある地域におけるHPPの医科歯科連携は、かかりつけ歯科医から歯学部附属病院小児歯科を紹介し、必要に応じて医学部・医科大学附属病院小児科で診断を受けていただくという流れになる。本学では医学部附属病院小児科の腎・骨代謝部門という小児の骨の病気の専門家に精査依頼している。一方で、歯学部・歯科大学附属病院が近くにない地域では、HPPの医科歯科連携体制の構築が困難である。こんな場合には、かかりつけ歯科医から基幹病院や医学部・医科大学附属病院の小児科または地域の小児科をご紹介いただいて診査を受けていただくことになる。

おわりに

 小児に対する日常歯科臨床や歯科健診の現場では、これまではう蝕や歯列咬合の診査に重点が置かれてきた。最近になって、「乳歯早期脱落」という歯科症状がHPPの早期発見の重要な手がかりとなる知見が蓄積されてきている。そこで、今後は乳歯の早期喪失に対しても診査を行う体制が構築されることを期待したい。また、HPPが謳われる症例に遭遇した場合、スムーズに医科領域の機関と連携をとって全身的な診査を行えるようにすることが重要である。そのために、地域の医科歯科連携体制をあらかじめ構築していく必要があると考えられる。

2020年7月 6日 (月)

Clinical 「低ホスファターゼ症」という病気とは? ④

続き: 5. HPP早期発見における課題  HPPは極めて低い頻度の疾患であることから、乳歯の早期脱落を呈する症例に遭遇しても、歯科医がHPPを疑うに至らないことが多い。特に、保護者の「外傷で歯が抜け...

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2020年7月 5日 (日)

Clinical 「低ホスファターゼ症」という病気とは? ③

続き: 3. HPPへの歯科的対応  乳歯の早期脱落に対しては、現時点では歯の脱落を防止する根本療法はなく、歯周状態を良好に保つために保護者への口腔衛生指導を行うとともに、定期的な歯周状態の管理を行う...

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2020年7月 4日 (土)

Clinical 「低ホスファターゼ症」という病気とは? ②

続き: 2. HPPの歯科症状  HPPの歯科症状の「4歳未満の乳歯の早期脱落」について、好発部位は乳前歯部で、特に下顎乳前歯から脱落が開始。  通常、生後8か月頃から下顎乳中切歯が萌出を開始し、1歳...

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2020年7月 3日 (金)

Clinical 「低ホスファターゼ症」という病気とは? ①

大川玲奈(大阪大学歯学部附属病院小児歯科講師、外来医長)さん及び仲野和彦(大阪大学大学院歯学研究科小児歯科学教室教授、同副研究科長)さんの共同研究文を載せる。:コピーペー はじめに  骨系統疾患は、骨...

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2020年7月 2日 (木)

Report 2020 祇園祭 ③

続き:  日本人はこれまで多くの輸入感染症=疫病の大規模な流行に翻弄されてきた。弥生人が持ち込んだ結核、平安時代からの大陸との交流で拡散したインフルエンザ、鎖国令下の密貿易で輸入されたコレラ等々。その...

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2020年7月 1日 (水)

Report 2020 祇園祭 ②

続き:  その後、平城京に帰還した遣新羅使人たちがクラスターとなって、時の政権中枢まで崩壊した天平の大流行を招来したのを筆頭に、天然痘は日本の歴史に残る大流行を繰り返してきた。 WHO の撲滅計画の結...

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2020年6月30日 (火)

Report 2020 祇園祭 ①

広多勤(横浜ヘルスリサーチ代表)さんのレポートです。 コピーペー:  夏の京都を彩る祇園祭。今年は新型コロナウィルス感染症 (COVID-19) の感染拡大防ぐために、祭りのハイライトである山鉾巡行や...

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2020年6月29日 (月)

人間と科学 第313回 体と心の5億年(3)—チャールズ・ダーウィン『ビーグル号航海記』を読む ③

続き:  ここに進化論の萌芽がある。いや、ダーウィンはガラパゴス諸島に滞在中に進化論のアイデアを得たというから、つまりここに、”進化論誕生”の現場が生々しく報告されている。  ダーウィンの思考法には「...

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2020年6月28日 (日)

人間と科学 第313回 体と心の5億年(3)—チャールズ・ダーウィン『ビーグル号航海記』を読む ②

続き:  『ビーグル号航海記』は、旅を終えた数年後の1839年に出版された。この本の日本語訳は、著者(布施)が若い頃には島地威雄訳の岩波文庫があったが、最近、荒俣宏氏による分かりやすい新しい日本語訳も...

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