~ アマゾンのNY進出騒動から読む~ ⑧

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   都市の対抗運動

 スーパースター都市が追及してきた創造都市政策は、結局、深刻な矛盾を増殖するメカニズムになった。そこに生まれたもう1件の対抗力――都市社会運動に触れる。

 ワシントンは低所得者住区を「特区」指定し、創造都市政策に熱心である。しかし、中間階層以上の白人が転入し、専ら黒人が排除される。そのため黒人住民が「創造都市政策は公民権法に違反する」と訴訟をおこした。シアトルでは、急増するホームレスに対し抜本的な対策を求める市民運動に押され、大企業の従業員(ハイテクエリート)に「人頭税」を課税して、それを原資にシェルターを増設する条例が成立した(その後、アマゾンなどが反対運動を組織し、条例は破棄された)。

 NYでは住民が結束し、激しいジェントリフィケーションが進行中のブルックリンでそれを抑制する都市計画規制を求め、NY市当局と協議が続いている。

 「ジェントリフィケーションと立ち退き現象」を展示するギャラリーや、それを演じる小劇場もある。今般のアマゾン反対運動もこの範疇に入る。裁判、デモ、メディアに投稿――など、その手法は多様だが、いずれも創造都市政策に異議申し立てをする都市社会運動である。

 1960年代に「古い都市危機」に対応する都市更新(大規模スラム一掃や高速道路建設)が広く行なわれ、それに反対する都市社会運動が高揚したことがある。

 NYではジェイコブズ(在野の都市研究家・都市運動家、名著『アメリカ大都市の死と生』がある)が、当時、開発担当局長として権勢を誇ったR・モーゼスと闘い、高速道路計画をつぶした。

 都市社会学のM・カステルは『都市とグラスルーツ』を著作し、都市社会運動の比較研究をした。しかし、情報系ハイテク企業の集積を促す創造都市政策に反発する昨今の都市社会運動は、大規模公共事業に反対したかっての都市社会運動とは時空間が違う。21世紀の新しい都市社会運動である。

 こうした都市社会運動の高揚に対して情報系ハイテク企業側も危機感を抱き、対応を急ぐようになった。マイクロソフト(本社ワシントン州レドモンド)が最近、住宅費の高騰が激しいシアトル都市圏内にアフォーダブル住宅を建設するのに500万ドルを地元基金に供与し、サンフランシスコ湾岸に中間階層以下のために住宅開発を支援するプログラムを発表した。

 かっての製造業が煤煙や垂れ流し汚染水などの「外部不経済(起業活動が生む社会的費用)」に対して責任を問われたように、今度は情報系ハイテク企業がその企業活動に付随する都市問題に対して費用負担を求められる状況になってきた。

 今後、アメリカ都市はどこに向かうのか。読み解くカギは成長と革新の資源を寡占し、それ故に矛盾を露呈するスーパースター都市にある。換言すれば、①その流れを反転し、多核分散型都市構造へ回帰を促す対抗力、②格差と不平等を生む創造都市に対抗する都市社会運動――その行方にある。アメリカ都市史の次幕は、これらの対抗力が重奏する時空間に広がる。

 また、政治的には、南部、中西部を含め、クリエイティブクラスターの形成が進む都市ではブルー(民主党)が濃い。都市社会運動はリベラル左派である。だとすれば、今後、2件の対抗力がさらに伸長すれば、大統領・連邦議会選挙にも影響を及ぼすようになる。

 

2019年5月19日 (日)

~ アマゾンのNY進出騒動から読む~ ⑦

続き:      「新しい都市危機」 の次幕を読む  都市史はフロリダが描く「新しい危機」で終わらない。「都市の文化」を著書して、卓越した都市論者だったL・マンフォードには、都市の輪廻を信じている、と...

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2019年5月18日 (土)

~ アマゾンのNY進出騒動から読む~ ⑥

続き:      「独り勝ち」 都市の問題  フロリダは二つの側面から「独り勝ち」都市を論じている。まず、スーパースター都市を巡る都市間関係。アメリカ大陸の東西海岸の、限られた都市が飛躍してパワフルな...

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2019年5月17日 (金)

~ アマゾンのNY進出騒動から読む~ ⑤

続き:      R ・フロリダの 「転向」 宣言  昨今、都市研究者の間で衝撃的なニュースになったのは、R・フロリダ(トロント大学教授。都市社会学)の「転向」である。2002年に「創造階級が都市の革...

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2019年5月15日 (水)

~ アマゾンのNY進出騒動から読む~ ④

続き:      グーグルの、「よき市民」としての進出戦略  NYでは、フェイスブックやリンクトイン、ウーバー・テクノロジーズなど情報系ハイテク企業の進出、業容の拡大が相次いでいる。「第2シリコンバレ...

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2019年5月14日 (火)

~ アマゾンのNY進出騒動から読む~ ③

続き:      変容するNYの「かたち」  これから検討する都市の「かたち」とは、可視的、建設的な意味に加え、人々の「働き方」「暮らし方」を含む都市総体である。「働き方」は雇用形態、及び産業構造を含...

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2019年5月13日 (月)

~ アマゾンのNY進出騒動から読む~ ②

続き:      いびつな誘致合戦  アマゾンの誘致では、州政府・市政府が30億ドルの利益供与(減税、補助金など)を約束した。市議会はアマゾンの重役を呼び出し、「時価総額」1兆ドルの世界企業に巨額の付...

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2019年5月12日 (日)

~アマゾンの N Y 進出騒動から読む~ ①

「世界 4」に矢作 弘(龍谷大学研究フェロー、ジャーナリスト)さんが書いている。それを載せる。コピー・ペー:  これは「創造都市」が生む未曾有の格差社会の事を述べている。      ハイテクエリート集...

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2019年5月11日 (土)

都構想・万博・カジノ ⑤

続き:    「財政民主主義からみた大阪の自治」の続き。  IRによって大阪府・市には年間700億円の収入が見込まれ、これを両者で折半するとすればそれぞれ300~400億円程度の収入を得ることになる。...

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2019年5月10日 (金)

都構想・万博・カジノ ④

続き:      財政民主主義からみた大阪の自治    大阪の市民が維新の会の政治を支持してきた最大の理由は、漠然と感じてきた財政の無駄遣いに対する批判にあった。それは、市民が財政を自分たちのために統...

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