« 2012/06/15 衆議院外務委員会の質疑 ② | トップページ | 実は日本の危機管理項目の一つに富士山大噴火が »

2012年9月22日 (土)

2012/07/14 中村 哲さんの報告 ⑤

PMSに残った唯一の診療所がダラエヌールである。ダラエビーチ(クナール州)、ワマ(ヌーリスタン州)は戦場になって久しく、再開の目途無し。2012年、同渓谷は「ダラエヌール郡」として独立した行政区画となった。旧シェイワ郡の人口が爆発的に増え、管理が行き届かなくなったためである。このため、診療所から小病院への格上げが問題になったが、行政手続きが煩瑣な割に実が伴わないと判断、時期をうかがっている。ペシャワールの旧PMS病院は、唯一残されたハンセン病治療施設として重きをなしていた。だが、戦乱で同病院を失った現在、同病の治療は大きな課題である。2012年3月、ペシャワール側から照会があり、未治療の患者が送られてきた。アフガン東部、特に、クナール州はハンセン病最多発地帯の一つである。しかし、無政府状態で本格的な動きができず、とりあえず、ダラエヌール診療所の一角を使用するよう検討された。治療薬はナンガラハルサ保健省の倉庫に眠っている状態だったが、行政側に訴え、その出方を見ている。アフガン側では、結核と統合した対策が表向き掲げられているが、診断・治療できる医療関係者が皆無で、事実上放置されている。カーブルとバーミヤンで長く活動していたドイツ系医療団体は既になく、期待がPMSに集中した。州保健省は興味を示し、その主催で指導的な医師層を対象に私(中村 哲)が講義を行ったものの、実態は殆ど知られていない。しかし、この政治情勢下で「ハンセン病どころでない」というのも本当である。PMSとて下手に動けば現地活動全局に影響が出る。しばらくダラエヌール診療所で小規模な診療を始めて静観し、患者数が無視できない状態になれば、再度行政側に打診、何らかの方策を立てる。



« 2012/06/15 衆議院外務委員会の質疑 ② | トップページ | 実は日本の危機管理項目の一つに富士山大噴火が »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 2012/07/14 中村 哲さんの報告 ⑤:

« 2012/06/15 衆議院外務委員会の質疑 ② | トップページ | 実は日本の危機管理項目の一つに富士山大噴火が »