« 戦争と医の倫理の検証 ① | トップページ | 歴史を振り返ることの意味 ① »

2012年9月11日 (火)

戦争と医の倫理の検証 ②

小俣氏の論文から引用:「加害者であった医師個人の実名を名指すことで、すでに述べた医師の師弟関係による医学界の『村的体質』とそれに由来する隠蔽体質、さらには医師の権威失墜を嫌う無謝罪体質という二つの大きな内部障壁を乗り越えれることに、少なくとも成功しているといえるからである。そこには学会員の個人責任が明瞭に指摘されている。」(前掲論文より)しかし、私たちはこれを他山の石として眺めてはすまされないことは、言うまでもない。理由の一つは、歴史の中に、もう一つは現在進行形で起きている事象の中だ。まず、歴史的事実の方は。小俣氏や筆者(香山リカ)も世話にを務める「『戦争と医の倫理』の検証を進める会」の活動を見るまでもなく、日本では、十五年戦争と言われる日中戦争と太平洋戦争の期間に、731部隊が占領各地で非人道的な行為を行ってきたことは、すでに、多くのルポや小説などによって人々に知られている。731部隊とは、関東軍の研究機関の一つの通称号である。満州を拠点に置き、「兵士の感染症予防や衛生的な給水体制の研究」を名目上の主任務としていたが、細菌戦に使用する生物兵器の開発機関の中核でもあった。多くの医学者、医師が所属し、中国人、朝鮮人、モンゴル人、ロシア人などに対して大規模な感染実験や死亡者の解剖、さらには手術演習という名目の生体解剖までが繰り返されたと言われる。犠牲者の数に関してはいまなお議論があるが、「少なくとも3千人」という定説。日本の場合、731部隊にかかわった医学者や医師は東京裁判の被告になることはなく、法的裁きを一切免れた。そのように個人的責任を問われるどころか、部隊に所属した者の多くは戦後、大学、国立の機関、製薬会社で要職に就き、医学の復興の担い手と言われ高い評価を得ることになったのだ。ドイツ同様、この問題がひそやかな声で語られていたのは”医学界の外”においてであり、部隊にかかわった医師が著書を出したり証言を述べたり、先述した「検証を進める会」のような医師を中心とした会が発足したりし始めたのは、21世紀になってからのことであった。





« 戦争と医の倫理の検証 ① | トップページ | 歴史を振り返ることの意味 ① »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 戦争と医の倫理の検証 ②:

« 戦争と医の倫理の検証 ① | トップページ | 歴史を振り返ることの意味 ① »