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2016年10月 4日 (火)

Report 2016 (2) スーパー耐性菌

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 プラスミドは細菌のゲノムとは独立して存在する環状のDNA断片で、異種の細菌の間でも容易に伝播する。薬剤耐性遺伝子がプラスミドに乗っているいると、その耐性が拡散する危険性が極めて高くなる。mcr-1遺伝子自体は従来から知られていたが、2015年11月に中国でプラスミド上にmcr-1遺伝子をもつ大腸菌が初めて認識されて以来、世界中の専門家が危機感をつのらせていた。
 薬剤耐性対策の緊急性は、先のG7伊勢志摩サミットでも議題に上った。日本政府は「薬剤耐性対策アクションプラン2016-2020」を4月1日に発表し、経口セファロスポリン系、フルオロキノロン系、マクロライド系抗菌薬の使用量を2020年までに2013年比で半減、静脈注射用抗菌薬も20%減らし、抗菌薬全体で33%の使用量減少を目指すとした。一方で、優先審査制度の創設などで薬剤耐性菌感染症の治療薬の開発を支援する。成果(目的)として、黄色ブドウ球菌ではメチシリン耐性株(MRSA)の検出率を2014年の51%~2020年には15%以下にするなどの数値目標を示して、対策に本腰を入れている。
 同アクションプランでは、畜産分野でも、大腸菌のテトラサイクリン耐性率を2014年の45%~2020年には33%以下にするなど、薬剤耐性率の現象目標を示した。実は、畜産分野では、大量の抗菌薬が使われているのである。コリスチン製剤も、下痢症の治療薬としてだけでなく成長促進剤として汎用され、特に中国や米国で大量に使われていて、耐性菌を生む温床となっていると指摘されている。
 一方、人の臨床では、コリスチンはCREや多剤耐性緑膿菌、多剤耐性アシネトバクターなどに対する最終救済薬として位置づけられている。腎毒性や神経毒性が強いため、日本では発売中止になっていたが、耐性菌対策として2015年に再認識された。再認識にあたっては、日本化学療法学会が指針を作成するなど適正使用を徹底しており、専門家の多くは、日本で「スーパー耐性菌」が出現する可能性は少ないとみている。ただし、渡航先での感染、外国人旅行客、畜産動物などを介してmcr-1遺伝子を獲得した「スーパー耐性菌」が忽然と現れる可能性はある。だが、それがいつ現れるかは誰にも分からない。




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