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2016年12月 1日 (木)

Clinical 高齢・要介護患者→全身管理(訪問歯科診療から) ②

続き:
2 . 高齢者の心身の特徴
 高齢者は、個人差はあるものの加齢によって心身に変化が現れ、若年者とは異なった特徴を示す。高齢者の患者管理に於いて、高齢者の特徴を知ること、老化現象について理解することは重要である。以下に各身体器官の加齢による機能的変化とそれに関連する代表的疾患を示す。
1) 筋骨格系
   (関連疾患:骨粗鬆症、大腿骨骨折、関節リウマチなど)
 筋組織は、細くなり筋量が減少する。筋量が減少すると、身体機能が低下する。身体機能が低下すると活動量が減少し、エネルギー消費量も減少する。それによって食事量も減り、慢性的な低栄養からさらに筋力低下をさせていくという悪循環に陥る。加齢性の筋肉減少とその結果として身体機能が低下した状態を「サルコペニア」と呼ぶ。そして、このようなサルコペニアから始まった悪循環を「フレイル」と呼ぶ。両者とも高齢者医療の重要用語である。
 骨は、骨組織を形成するCaの減少によって骨粗鬆状態になる。外力に対してもろくなり、転倒などによって容易に骨折を起こすようになる。関節は、軟骨の硬化と可動域が減少する。骨折や関節疾患などの筋骨格系の疾患が、すべて合わせると要介護原因の22.7%(平成25年度国民生活基礎調査)を占める。廃用症候群のきっかけになることも多い。
2) 呼吸器系
   (関連疾患:肺炎、肺気腫、肺繊維症、肺がんなど)
 筋肉の老化は横隔膜や肋間筋などの呼吸筋も例外ではない。筋力低下に伴って、呼吸運動は低下する。胸膜関節の石灰化によって胸壁の可動域も低下。肺胞は拡張し、酸素の取り込みと炭酸ガスを排出させるガス交換に関与しない残気量が増加。
 肺胞は、葡萄の房のように気管の先に付いていて、その周囲を血管が蔦の枝のように巻きついている。肺胞に入った酸素は肺胞壁を通って血管内に浸み込み、Hbと結合して全身に運搬される。若年者の肺胞は、張りのある球形であるが、高齢者の老化した肺胞は張りを失い、古くなった軟式テニスボールのようになる。そのため血管に浸み込めないガス交換に関与しない領域が肺胞に出来てしまう。この現象が極端に起きた状態が肺気腫である。ガス交換が良好に行われないため、慢性的に低酸素状態になり、日常生活で酸素を必要とする。また、気管支粘膜の腺毛運動が低下し、気管支分泌物の喀出力が低下することによって、肺炎が起こりやすくなる。肺炎は、乾いているはずの肺胞が炎症性滲出液で満たされ、ガス交換が良好に行われなくなった状態である。
3) 循環器系
   (関連疾患:高血圧症、虚血性心疾患、弁膜症、不整脈など)
 心臓を覆う心筋と心筋の間にアミロイドなどの異物が沈着し、また線維化が進み心臓壁が肥厚することによって心臓肥大が起こる。大動脈弁や僧房弁などは変性し、肥厚や石灰化によって弁膜症が起こりやすくなる。心活動のリズムを作り心臓の電気的刺激を伝える経路である刺激伝導系にも変性が起こり、除脈や房室ブロックなどの不整脈が起こりやすくなる。筋肉の老化は、心房にも起こり、心房細動などの不整脈も起こりやすくなる。
 血管は、加齢によって弾性を失い硬くなる。中膜の血管の弾性を保っているエラスチンの減少や石灰化が起こるからである。血管の弾性の消失は、収縮期血圧を上昇させ、拡張期血圧を低下させる。弾性が失われて硬くなった動脈内には、様々な物質が沈着して血管が狭窄し、血液の流れが滞る状態、すなわち動脈硬化が起こる。心臓の筋肉に酸素を供給している冠動脈に動脈硬化が起こると、虚血性心疾患を発症。
 老化による心臓肥大や動脈硬化、さらには虚血性心疾患や弁膜症などの心疾患によって、心臓のポンプ機能は低下する。この心機能低下が悪化した状態が心不全である。心不全は、心拍出量が低下し、各臓器や末梢で循環不全が起こる状態で、肺には鬱血が起こり呼吸困難感や咳などの呼吸器症状も出てくる。若年者の健康な心臓は、安静時に1回に70ml程度を拍出し、1日に7トン程度の血液を滞ることなく循環させている。高齢化、特に心不全が起こると様々な部位で血液循環が滞り、肺鬱血にによる呼吸器症状や浮腫などの様々な症状が出てくる。又、動脈硬化は、ポンプ力が作用する向きとは逆方向の負荷を心臓へかける。
 




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