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2016年12月16日 (金)

Science アスパラギン酸ラセミ化法による年齢推定 ⑤

続き:
事例 3
(1) 概要
 民家から、ほぼ全身白骨化した死体が発見され、死因が不明で犯罪性を否定できないため司法解剖となった。この死体の人物は生存していれば100歳を超えており、多年にわたり年金が継続的に支払われていた疑いがあったため、死因究明以外に死亡時の年齢が問題となった。捜査では、死体周辺に置かれていた新聞の日付から、79歳前後で死亡したとみられていた。
 白骨化した顎骨部には、上顎無歯顎、下顎は左側側切歯、同第一小臼歯、同第一大臼歯そして右側第二小臼歯が残存していた。
(2) 背景
 ラセミ化反応の進行は温度の影響を最も受けるため、人の生存時の体温37℃から抜歯あるいは死亡によって室温(20℃前後)になると、その反応速度が極端に遅くなる。そのため抜去歯や死体の歯から抜歯時あるいは死亡時の年齢の推定は可能である。
(3) 分析結果
 解剖時に採取した下顎の左側側切歯、同第一小臼歯、右側第二小臼歯を用いて年齢推定をおこなった処、それぞれ76、76、73歳と算出された。
(4) 鑑定
 死亡時の推定年齢は、-3~+3の誤差を考えて76歳とし、73~79歳と幅をみた。それで、現場の状況から推定された死亡時の年齢79歳を肯定する結果であった。
                       おわりに
 従来、事例1のような身元不明犯罪死体の身元をすること、鑑定すること、該当者の絞り込みをすることを目的にラセミ化法による年齢推定を行ってきた。しかし、今回は、歯を含む部分死体が加熱されてから遺棄されたこと、解剖所見から推定できなかった死亡時の年齢を、ラセミ化法を用いてそれぞれ科学的に証明することができた。
 加熱の有無、30年経過した高齢者死体の死亡時の年齢推定は、いずれも単に死体の年齢推定を求めたのではなく、明確な目的をもって分析したものであり、従来の単なる年齢推定に止まらない、ラセミ化法の新しい可能性を示した鑑定である。
 歯科法医学は、法医学以上に個人識別が必要とされるため、歯の所見と同様に歯からの年齢推定は今後いっそう必要性が高くなると考えられる。ラセミ化法による年齢推定はすでに計画されているが、今回の2事例のように、その原理を応用した新しい展開から年齢推定に付随する結果が犯罪捜査に寄与できたことは、これからのさらなる発展が期待できる。





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