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2016年12月15日 (木)

Science アスパラギン酸ラセミ化法による年齢推定 ④

続き:
事例2
(1) 概要
 23歳の女性を殺害、死体を細かく切断し、各部分をトイレから流したとされる事件である。捜査員により下水道から多数の切断された人骨が発見され司法解剖となった。解剖時、骨に軟組織がまったく付着していなかった所見と、捜査で判明した被疑者の自宅で深夜から早朝にかけて多量にガス・電気が使われたデータから、骨を切断後、加熱した可能性が考えられた。しかし、骨に焼け跡などの熱による痕跡が認められず所見からは加熱の有無を明らかにできなかった。
(2) 背景
 神奈川研歯科大学の研究教室では以前、火災現場で発見された焼死体の年齢推定で左右中切歯から100歳以上の年齢を算出しており、ラセミ化現象は熱の作用で異常に促進されることを経験していた。この事例では、歯は左右に離断された上顎骨片に第一大臼歯がそれぞれ残存していた。
 上顎骨片の2本の大臼歯の年齢推定より高く算出された場合は、上顎骨が加熱された可能性を強く肯定する科学的根拠となり得るということで鑑定依頼された。
(3) 分析及び結果
 抜歯時の年齢既知の歯5本を用いて年齢算出式を求め、そこに上顎骨の左右第一大臼歯2本および対照として被疑者の加熱処理の状況を再現したものとして、抜歯時年齢49歳の上顎第一大臼歯を100℃で5時間加熱した歯のD/L比をそれぞれ代入した処、右側第一大臼歯が26歳、左側第一大臼歯が30歳と算出され、対照歯は53歳と算出された。
(4) 鑑定
 対照歯は53歳と算出され、抜歯時の49歳+4歳であった。これは100℃で5時間の加熱程度では火災現場に置かれた焼死体ほど著しいラセミ化の促進は生じないことを意味する。上顎左側第一大臼歯は30歳と算出し、実際年齢+7歳の差が出た。7歳の差は経験上の誤差(-3~+3)を超えているため、歯に熱が作用してラセミ化を進行させたとして矛盾しないと鑑定した。





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