« Clinical 高齢・要介護患者→全身管理(訪問歯科診療から) ⑥ | トップページ | Science DNA分析による身元特定と犯罪捜査 ② »

2016年12月 7日 (水)

Science DNA分析による身元特定と犯罪捜査 ①

山田良広(神奈川歯科大学教授)さんの文をコピー・ペー:
はじめに
1) 身元特定の最終手段はDNA
 身元特定(身元確認・個人識別は同意語)手段の選択は死体の状況によって変わってくる。死体が完全死体である場合、腐敗がなければ指紋、腐敗があり指紋を採取できない場合は歯の所見となる。大規模災害などで多くの身元不明の犠牲者が出た場合、早期に身元が確定されるのは対照資料である生前の指紋や歯の所見データが残っているケースであることは、2004年のスマトラ沖地震や2011年の東日本大震災の身元特定資料の内訳からも明らかである。
 一方、2001年のアメリカの世界貿易センタービルテロの際、身元確認作業終了時のデータで、最も多かったのはDNAによる身元特定であった。指紋・歯の所見はともに生前死後の対照のみなので迅速に行われるが、生前の対照資料が不可欠であり、対照資料が存在しない場合、部分死体を含め身元特定は最終的にDNA鑑定によって行われることになる(表1― 後で)。
2) 本来 DNA 鑑定は身元特定に使えない
 身元特定の絶対条件は、万人不同で終生不変である。これを満たす手段は指紋のみで他の手段は本来身元特定は行ってはならない(表― 後で)。ところが、実際の身元特定作業ではDNA鑑定は必要不可欠になっている。― 理由:
 (1)生前資料がなくても可能だ。指紋・歯の所見では生前資料の存在が不可欠であることに対し、DNA鑑定は本人の生前DNAが残っていない場合でも血縁者との間での親子鑑定や兄弟姉妹鑑定で本人の特定可能だ。
 (2)データベースの構築と検索が容易。対照者が特定できない死体でもDNA型をデータベース化しておくことで、新たな対照者があらわれた場合、容易に検索できる。
 (3)身元の特定に確率計算が可能だ。DNA型の遺伝子頻度が分かっているため、本人である確立を算出できる。
3) DNA鑑定は犯罪捜査の切り札
 DNA鑑定の長所は、身元特定に有利とされる上記の他、微量・腐敗資料でも分析可能だ。
 犯罪現場に残されている資料は毛髪1本・体液1滴など微量なものや、死後変化で高度に腐敗している資料が多い。このようにな資料の分析には、少ない・断片化しているDNAの必要な領域を選択的に分析可能な量に増やして分析するPCR(Polymerase Chain Reaction)法が最適であり、DNA鑑定=PCR法であるため、DNA鑑定が犯罪捜査の切り札として用いられている。
4) 歯科医師とDNA
 「2016/04/14(h-28)、発生の熊本地震に被災した大学生の遺体が2016/08/10、発見され、両親との親子鑑定によろ2016/08/14、本人と確認された。」との報道があった。
 DNAによる身元特定は、死体の組織から抽出したDNAと確認すべき人物の生前DNA、あるいはその血縁者のDNAを比較対照するが、本人の生前DNAが確実に保存・保管されていれば、死体のDNAとの照合は迅速に行うことが可能だ。上記身元特定も本人の生前DNAが存在すれば確認に4日は必要なかったと思われる。
 生前DNAの保管には口腔粘膜細胞(スワブ)が適している。さらに生体からスワブの採取はDNAの採取・保管の研修を受けたデンティストが行うべきである。愛知県歯科医師会では、それらの意義をいち早く理解し、会員のデンティストが希望者のスワブを採取しFTAペーパーという特殊な保存紙で保存、歯科医師会が一定期間それを保管し、災害に被災するなどで、DNAの必要が生じた場合のみ照合している。また、DNAを抽出・分析するDNA保管事業を全国の歯科医師会に先駆けて行っており、最近では同県の豊橋地区の先生方が中心となり、精力的に活動している。大学では神奈川歯科大学が所在地である三浦半島の住民を対象にスワブの採取、DNA分析まで行い現在約1,000人のデータベースを構築・継続中だ。
 頻発する自然災害の万が一の場合に備え、身元特定を迅速にする意味で個人のDNA抽出源を保管、あるいはデータベース化しておくことは、デンティストが行うべきリスクマネージメントとして注目される。




« Clinical 高齢・要介護患者→全身管理(訪問歯科診療から) ⑥ | トップページ | Science DNA分析による身元特定と犯罪捜査 ② »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: Science DNA分析による身元特定と犯罪捜査 ①:

« Clinical 高齢・要介護患者→全身管理(訪問歯科診療から) ⑥ | トップページ | Science DNA分析による身元特定と犯罪捜査 ② »