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2017年1月 3日 (火)

殺菌作用のある精油は我々には毒か? ②

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 さて、ペプチドグリカンの防御層を通り抜けた精油は、細菌の細胞質を取り囲んでいる細胞膜に到達する。この時、細胞膜は精油の侵入に対してはほとんど無防備といって良い。なぜならば、精油は複雑な分子構造はしているものの、細胞膜を構成する脂質と同じ疎水性物質であるから。そこで、細胞内に侵入した精油は次にそのターゲットを探すことになる。ところが、細胞の細胞質の中はタンパク質がぎっしり詰まって並んでいるので自由に動くとというわけにはいかない。そこで、手近にあるタンパク質を手当たり次第に捕まえて、その機能を阻害することになる。
 大腸菌の中のタンパク質のほとんどは酵素で、生きるために必要なATPを産生したり、栄養物を消化したりしている。これまでの研究では、ATPをエネルギーに変える際のATP分解酵素を精油が阻害することが知られている。そのため、もしもATPが利用できなくなり、鞭毛が動かなくなると、大腸菌は行動できなくなり、菌として機能しなくなる。従って、精油が細菌の増殖を制御する効果は、効率の悪い(嫌気的な)方法でようやく作られたATPを利用できなくさせるメカニズムが働いていると言って良い。従って、この場合精油は細菌にとっては毒ということ。
 それでは、我々の体を作っている動物細胞に対して精油はどのように働くのであろうか。前にも触れたように、精油が細胞膜に達すると、TRPチャネル(一過性レセプター電位チャネル、前回―4つのチャネルを挙げた)を活性化して細胞の外から内へ主にCaイオンを注入する。この時Ca濃度はいったん上昇してすぐに下がってしまうので、(こういったシグナルのことを一過性シグナルという)、このCaは単なる信号物質(メッセンジャーと呼ばれる)であって、毒性を云々するほどの問題とはならない。





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