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2017年1月17日 (火)

Topics これからの日本―社会保障制度を考える私見 ⑦

続き:
7. 社会保障の正確な理解についての1つのケーススタディ
 こうした議論の中で、教育検討会において、2012年3月「社会保障の正確な理解について1つのケーススタディ」が示されている。そこでは、2012年2月に公表された内閣府試算の論点を整理した上で再度、社会保障制度とは何かを考察している。
 年金制度は、1960年代に国民皆年金となり、その頃から多くの人が加入するようになったが、それ以前の世代は制度に加入していない人も多く、年金給付が無い為に、老後の生活は私的扶養に頼ってきた。今の80歳代、90歳代の年金受給世代は、彼らが現役時代の保険料は比較的少なかったが、公的年金に対する保険料負担とは別に自分の親を直接的に扶養していた。
 戦後以来、我が国は経済成長とともに豊かになってきた。この20年においても経済成長率でみると伸びは低下しているが、携帯電話の普及やICT(Information and Comunication Technology)の進化など、その間の生活の利便性が高まり、生活水準が向上してきた。これらは、単純に数字だけでは表現できず、定量的な評価が難しい。
 一方で、そういう前提であるにも関わらず、あえて定量的な計算をした内閣府試算に対して、以下の5つの視点で検証を行った。
 ① 世代ごとの負担と給付の平均額を算出しているが、リスクヘッジ(リスクの回避・    
  軽減)が保険の本質であり、保険で想定されたリスクプレミアム(リスク分に対して
  求める上乗せ利益)を考えるべき。
 ② 割引率の概念について、年金給付は金融商品ではないため、金利で割り引く 
  のは不適切。「所得代替率」という指標があるように、年金給付は現代世代の
  賃金に依存しており、賃金上昇率で割り引いて評価する。
 ③ 医療や介護の現物サービスについて、金額で評価することは困難。著しく進
  む医療の技術進歩はどのように考えたらよいか。
 ④ 厚生年金の保険料は労使折半で負担だが、その際の事業上負担分をこの
  計算の負担に入れる or 入れないについては、それは、適切という答えはない。
 ⑤ 厚労省は倍率(割り算)で結果を示しているのに対して、内閣府試算は
  引き算で、負担が給付を上回った分をマイナスで表記。⇒表記の仕方で「損」
  になることを強調している。
 これらを検証した上で、そもそも、社会保障をどのように理解すればよいかを整理した。
1) 再分配制度の在り方
 社会保障制度の中で、再分配を行うべきか如何に就いて、再分配は税で行うべきもので、社会保障では必要ないと主張する人もいるが、社会保障の本質が再分配政策だ。そして、基礎年金額が生活保護の水準に比べて低いことについても理解が十分に浸透していない。生活保護は、固定資産を含めた財産や親族等の支援がないことを確認した上で、最後の手段として受けるもの。そのため、それ事態は良いことではないが、どうしてもスティグマ(劣等処遇の原則)が生まれる。一方、社会保険の仕組みは、長生き、病気などのリスクに直面しても、その制度に保険料を納付して加入していることで給付を受ける権利がある。そのことに何も、後めたさを感じる必要はない。おそらく、高齢者で年金をもらうことを恥ずかしいと思っている人はいないはずだ。
   



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