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2017年3月25日 (土)

債務超過の悪夢 ⑥

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 東芝の誤算は、2015年に発覚した粉飾決算事件を受けて、2016年4月から開始する連結事業年度の会計監査法人が、今までの新日本監査法人~PwCあらた有限責任監査法人になった。これに始まる。親会社の連結会計監査人の変更に伴い、米国WECの会計監査も、新日本監査法人の提携するEY~PwCあらた監査法人の提携するPwCへと変更。新日本―EYの行う監査とあらた―PwCの行う監査に、本来的な質の差は全く存在しないが、両社はこと東芝の監査に限定すると、その立ち位置が全く異なる。
 新日本―EYは、今まで東芝の粉飾財務諸表に対して、英々と立派な適正意見を出し続けてきた。粉飾がばれたからと言ってもその片棒は自分たちが担いできたわけで、ばれてしまったものならともかく、そうとも言えない減損問題について、今更駄目なものはダメと強く出ることが出来ない。
 因みに東芝は、監査法人にとってまことに良客で、結果として何の意味もなかった例年の監査に於いて、新日本監査法人に10億円、EYに、17億円という美味しい監査報酬を払っていた。しかも、粉飾への共謀が明らかとなった2016年3月期には、粉飾訂正のための「過年度決算の訂正に係る監査業務に対する報酬が含まれる」などと常軌を逸した言い訳をして、新日本監査法人に53億円、EYに26億円、合計79億円の報酬を支払っている。因みに金融庁が、東芝の粉飾決算に対する監査に対して、新日本監査法人に課した課徴金命令は21億円1100万円。これでは新日本監査法人は焼け太りで、金融庁の課徴金命令など何の意味もない。
 PwCあらた監査法人の立場は全く異なる。新日本監査法人が、企業会計原則と監査基準に従った当たり前のことを言いだそうものなら、東芝から「いまさら何を言い出すのか?東芝の実情に理解を示せなければ、監査人を変えるぞ」との有形無形の圧力を受けるが、粉飾決算の結果変更になったPwCあらた監査法人にこの手は通じない。PwCあらた監査法人にとっては、当たり前のことを当たり前に言っても、優良顧客喪失のリスクがないばかりか、むしろ社会全体がPwCあらた監査法人を評価してくれるのである。現行監査実務に於いてはあり得ない監査法人の完全なる独立性が、2017年3月期のPwCあらた監査法人が行う東芝の監査においてのみ、瞬間的かつ奇跡的に成立している。東芝はこの凄みを見誤った。
 新日本監査法人が、粉飾決算後も、あのまま東芝の監査をやり続けてくれていれば、2015年夏より始まったWECの収益性問題も、S&Wの買収でもみ消したので、どうということもなかった。WECとCB&Iの仲裁裁判も起きる必然性がなかったし、S&Wの正味運転資本の不足をWECが言い出すことも無かったであろう。ならば、この期に及んでの数千億円の減損も無かったのである。
 ところが、2016年6月末の東芝の株主総会を経て、PwCあらた監査法人とPwCによる監査が始まった。CB&IがS&Wんの正味運転資本問題で、WECをデラウエア州立仲裁裁判所に提訴したのが2016/07/21のことである。この仲裁裁判で、WECはS&Wの行う原発プロジェクトに、回収できない巨額の追加原価が発生しており、S&Wの正味運転資本が大きく毀損している事を主張するのであるが、この至極もっともな主張は、6月末に就任してPwCの監査を色濃く反映しているのではないか?




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