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2017年3月16日 (木)

水銀に関する水俣条約「歯科用アマルガム」 ③

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■EU

  EU全体では年間115トン(2005年)の水銀が排出されている。EU科学委員会は歯科用アマルガムがEUにおける2番目に大きな水銀の使用であるとして、水銀とその化合物の排出において環境品質基準を制定している。EU全体としての歯科用アマルガムの使用に対する規制はないがスウェーデン、オランダ、デンマークでは水銀を含む歯科用アマルガムの輸入・製造・販売・使用が禁止されている。多くのEU加盟国では歯科医院に対してアマルガムセパレーターの設置を義務付けている。

 

■日本
 世界全体の水銀需要が3798トン(2005年)で歯科用アマルガムが10%を占めるのに対し、日本の水銀使用量は9.0トン(2015年)で歯科用アマルガムは0.2%と非常に少ない。日本国内の歯科用アマルガムによる水銀使用量は、1970年には約5200kg であったが、1999年には約700kg、2006年には約100kg、2010年では約20kgまで大幅に削減された。
 環境省の水銀大気排出インベントリ(2010年度ベース、2013年更新)によると、日本国内における水銀の大気排出量は年間17~21トンと推計され、歯科用アマルガム製造による排出は0.4kgと非常に少ない。また、火葬(に伴う歯科用アマルガムの蒸発)による排出は年間0.07トンと推定されている。一方、歯科用アマルガムの使用もしくは除去による歯科医院から環境への水銀排出についての明確なデータはなく、除去した歯科用アマルガムの大半は金属業者によって回収されていると考えられている。今後は「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」に基づき、水俣条約の発効日以降に、(歯科用)水銀等(水銀が0.1重量%以上含むもの)を管理しリサイクルを目的とした売却等を行う場合は「水銀含有再生資源管理者」として、環境の汚染を防止するための措置の実施が求められることとなった。また、同法に基づき、水銀等30kg以上貯蔵、または水銀含有再生資源を管理している場合には、実施した措置の内容や量などに関係する国への年1回の定期報告が必要となる。
■日本の歯科界が担う役割
 今日の日本では新規のアマルガム充填は殆ど行われなくなり、その除去が多くの歯科医師にとって歯科用アマルガムを取り扱う主な機会になると思われる。アマルガム切削片や蒸気の適切な吸引、アマルガムセパレーターの設置による下水への排出の削減、除去したアマルガムの正規産廃業者への処理委託などを歯科医師個人が心がけることで、水銀による環境汚染対策の一環として歯科界からの貢献が期待される。
 また、日本でアマルガム充填が減少した背景にはコンポジットレジン(CR)、やグラスアイオノマーセメント(GIC)などの代替材料の開発とその臨床応用が急速に発展したことが挙げられる。開発途上国ではそれらの材料・設備が十分でないために、未だにアマルガム充填が修復治療で大きなウエイトを占めている。日本は世界でも類を見ない有機水銀による大規模な公害病を経験した国として、また、歯科医療先進国の一員として、ART法などの日本発のテクノロジーをグローバルに普及させることが日本歯科界の使命である―――と思う。





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