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2017年3月 8日 (水)

Science 歯磨剤の科学とフッ化物のメカニズム ⑥

3. FAの定義

 歯質に存在するFAは何の役割を果たしているのか。再石灰化によって形成されたFAは、エナメル質アパタイトと比較して溶けにくい。とはいえ酸には溶解する。Ogaardらは、4週間プラークコントロールを全くしないヒト口腔実験で、ヒトエナメル質とサメの歯(純粋なFA)の脱灰程度(ミネラル溶出量)を比較し、その程度は約 1 : 0.59と報告。また同様のヒト口腔実験でフッ化物洗口剤の効果も検討し、サメの歯と同程度の脱灰程度であった。と報告があった。これらの結果から考察されることは、FAは脱灰されてFはプラーク液内に放出されるが、pHが回復しはじめるとFAに関して過飽和な状態になり、脱灰が抑制される。またエナメル質がすべてFAになってもむし歯はおこるであろう。

 このようにFAは、F-イオンの貯蔵庫の役割を果たしている。しかしFAから溶出した一部のF-イオンは、唾液に拡散しエナメル質から失われる。したがってエナメル質すべてFA化すれば、う蝕はなくなるわけではなく、失われるフッ化物は常に補給されなければならない。そのような意味で毎日F歯磨剤を使用する意義がある。FAとして存在しないが、別のかたちでエナメル質に沈着したアパタイトに静電気的に吸着したF-イオンも、同様にF-イオンの貯蔵庫の役割を果たし、F-イオンが徐放されてう蝕予防効果を発揮する。

4. 再石灰化の促進

 再石灰化とは、通常はpHが中性の時(即ち脱灰無しの時)に使う用語。ここでは、F-イオンによる脱灰抑制メカニズムで、pH酸性下で例外的に用いた。中嶋は、1ppmのF-イオン含む人口唾液にエナメル質表層下脱灰試料を4週間浸漬すると、かなりの再石灰化が起きることを確認。これは、人口唾液がFAに関して過飽和になり、初期う蝕病変内にFAが沈着(再石灰化)したからである。

 唾液がpH中性の時、そこに1ppmのF-イオンが存在する場合とそうでない場合とで、ハイドロキシアパタイト(HA)とFAの形成しやすさ(再石灰化のポテンシャル)の比較をした。HAの場合、同ポテンシャルは唾液に含まれるHAの構成イオン濃度に比例するので、(Ca2+)5乗*(PO4 3-)3乗*(OH-)で示す。 FAの場合は、(Ca2+)5乗*(PO4 3-)3乗*(F-)で示す。( )はイオン濃度は同じなのでポテンシャルの違いは、(F-)/(OH-)となる。pH7ではOH-イオン濃度は1/10* 7乗モル濃度(mol/L)である。1ppmF-イオンは約5.3/10*10*10*10*10 モル濃度となる。従って、その割合は530倍だ。それは 0.1ppmでも53倍の違いが生じる。つまり脱灰抑制の場合と同様、F歯磨剤を毎日使用することで口腔内にわずかでもF-イオンが残れば、再石灰化促進効果が得られる。

 このように、低濃度のF-イオンでも持続的にプラークや唾液に存在すれば、脱灰抑制と再石灰化促進に有利に作用するとする考え方(メカニズム)は、う蝕抑制治療後のコンポジットレジン、グラスアイオノマーセメントあるいは予防シーラントにフッ化物を配合させた製品に生かされている。

 




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