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2017年4月 5日 (水)

債務超過による東芝の存続は ③

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 さて、WECの買収時に計上された「のれん等」は。「のれん」が3508億円、ブランドネームと称する非消却無形資産が503億円の合計4011億円であった。東芝が2016年3月期決算で減損したWECののれんは2636億円。従って、東芝の連結財務諸表には、WECに関する872億円(3508億円ー2636億円)の「のれん」と、503億円の「ブランドネーム」の合計1375億円の「のれん等」が残った。今回S&Wの追加原価処理に伴って減損された既存の「のれん」は872億円なので、503億円の「ブランドネーム」は減損されていないのである。
そこでWECとS&Wは、米国においてAP1000型原発プロジェクトを共同して進めている。今回S&Wの買収で計上された同額の「のれん」は、S&Wの将来収益を検討するまでもなく即時減損された。このことは、WECの原発建設の事業性の破綻を意味するので、WECののれん残高も減損だ。そうならば、価値の無くなったWECの「のれん」のブランドも、当然に減損されなくてはならない。
 このように、未提出の第3四半期財務諸表は、その骨格部分において自己矛盾を内包し、財務諸表と言いうるための首尾一貫性を欠いている。決算試算表における首尾一貫性の調整を決算修正手続きという。東芝は、2月14日時点において、決算修正手続きを終えることができず、第3四半期財務諸表と言いうるものを作成不可。監査すべき決算財務諸表が存在しないのだから、監査法人が監査意見を出せなかったのは当たり前のことであろう。
 今となっては、あれは何だったのだろうと不思議な気がするが、2月14日の東芝の決算発表予定日の前々日、日経は、東芝が2011年に買収したスイスの電力計大手ランディス・ギアの「のれん」の減損を計上する検討に入ったと報道。この記事の末尾では「米原子力事業の巨大損失で将来の事業リスク管理が厳しく求められる中、損失計上に踏み切ることで要請に応える」(-日経2月12日)とまで切言する。
 ランディス・ギアは、スイス法人で、電力制御用スマートメーター(次世代電力計)では世界有数のメーター・システム会社である。東芝は、2011/05/19に、ランディス・ギアの全株式を23億米ドル(1793億円)で買収、同年8月22日、このうち40%の持分を、6億8000米ドル(532億円)で(株)産業革新機構に売却。ここで産業革新機構とは、出資総額3000億円の政府系投資ファンドで、出資金のうち2860億円(95.3%)は、財政投融資特別勘定により、残りの140億円(4.7%)は、東芝を含む大手民間企業25社により出資。産業革新機構の業務の監督は経産省が行う。
 東芝は、経産省の強力な後押しを得て、世界で有名なランディス・ギアを買収したが買収時点のランディス・ギアの財務状況は、流動資産が545億円、固定資産が330億円、流動負債が408億円、固定負債が350億円と、純資産は、僅か117億円(545億円+330億円ー408億円ー350億円)しかなかった。純資産117億円のランディス・ギアを1793億円で買収したわけであるが、東芝は、この買収差額1676億円(1753億円―117億円)を、顧客関連無形資産として369億円、技術関連無形資産として134億円、東芝得意のブランドネームとして88億円計上し、さらにその残り1085億円(1676億円ー369億円ー134億円ー88億円)を「のれん」に計上。
 東芝の2012年3月期の有価証券報告書によれば、買収後9カ月のランディス・ギアの売上高は809億円で、同注記において「当期純損益に重要性はありません」と記載されているので、ランディス・ギアのはろくに儲かっていなかったのであろう。前述の日経の報道によれば、ランディス・ギアの2016年上期の連結売上高は、前期比9%減の845億円、営業利益は同44%減の34億円。1793億円も投資して、その半期営業利益が34億円ということは、投下資本利益率は3.8%に過ぎない。―3.8%と言えば、上場REIT(不動産投資信託)の利回りを若干上回るもので、これではとてもランディス・ギアに超過収益力があるとは言えない。超過収益力が認められない「のれん」は減損されなくてはならないのである。





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