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2017年5月30日 (火)

Science 必要な糖と代用甘味料の知識 ②

続き:
2 . 砂糖
1) 砂糖とスクロース
 スクロースはグルコースとフルクトースが一分子ずつ結合した二糖で、ほとんどの植物に広く存在する。化学物質として扱う場合には「ショ糖」といい、工業的に甘蔗(サトウキビ)より精製することから「ショ(庶)糖」と呼び、ショ糖を主体とする工業的製品を総称して砂糖と呼ぶ。
2) 砂糖の原材料
 工業的な砂糖の原材料はサトウキビとサトウダイコン(ビーツ、甜菜)である。サトウキビは熱帯、亜熱帯で、サトウダイコンは比較的冷涼な温帯で栽培される。サトウダイコンから作られた砂糖は甜菜糖とも呼ばれ、これが作られるようになったのは18世紀以降と比較的最近である。
3) スクロースの特徴
 スクロースは、天然に存在し、エネルギー源としてのグルコースにすぐ変わること、比較的安価で、食品として安全であること、熱をかけても甘さが変わらないこと、多量に用いれば防腐作用があることなど多くの長所を有する。その最大の特徴は何といっても味が良いことで、甘さこそフルクトースに及ばないものの、甘味度の基準がスクロースであり、人工甘味料はいかにスクロースに味を近づけるかが開発の中心であることからも、スクロースが甘味料が王様だといえる。ただ唯一の欠点はう蝕の原因となることである。
3 . スクロースとむし歯
 う蝕病原細菌であるミュータンスレンサ球菌はグルコシルトランスフェラーゼ(glucosyltransferase:GTF)という酵素を産生し、このGTFはスクロースを基質として、スクロースをグルコースとフルクトースに加水分解し、得られたグルコースを鎖状につなげる。グルコースが長くつながった多糖はグルカンと呼ばれ、ミュータンスレンサ球菌が産生するグルカンは、非水溶性で、粘着性があり、これが歯面にプラークバイオフィルムを作る。この粘着性グルカンの付着は非常に強力で、歯面のバイオフィルム除去にはブラッシングによる物理的な力がどうしても不可欠なのだ。興味深いのは、GTFはグルコースからは直接グルカンを産生できず、スクロースからしか産生できない。
 次いで、スクロースはバイオフィルム内のほとんどの細菌に代謝され、代謝産物として有機酸が産生されて、歯面の脱灰を引き起こす。バイオフィルムの産生にはスクロースのみが関係するが、次の酸産生の過程ではスクロースだけではなく、グルコースやフルクトースなどの多くの糖が基質として働く。
4 . 甘味料によるう蝕抑制効果は本当にあるのか?
 甘味料のう蝕原性は、試験管内での酸の産生実験、動物実験、ヒトでの臨床試験などで評価されるが、ヒトでの臨床試験は倫理的問題がありあまり行われていない。我々のラットを用いた動物実験の結果(表略)がある。飼育中にスクロース、グルコース、マルトースを単独で28%加えた群と、スクロース28%にそれぞれ28%のグルコースとマルトースを加えた群、更にコントロールとして糖の代わりに小麦粉を与えた群を設定した実験をやった。糖単独のう蝕う蝕誘発能は、小麦粉群をベースラインとし、スクロース単独のう蝕スコアに比べてグルコース、マルトースは、相対的に低く、この2つの糖の「う蝕誘発能」は低いといえる。
 次にスクロースと供試糖が共存している時のスコアは、グルコースはスクロース単独よりも高いのに対して、マルトースは逆に低くなる。この結果からマルトースには「う蝕抑制能」があるのに対して、グルコースはスクロースによるう蝕を増悪してしまうことが示されている。
 この「う蝕誘発能」と「う蝕抑制能」が混同して使用されることがあるので注意が必要である。日常生活で砂糖や他の糖を全く摂取せずに生活することは不可能で、甘味料を用いてう蝕を予防するためには「う蝕抑制能」のある甘味料が必要になってくる。しかし、そのような理想的な甘味料は存在しない。仮に実験では良くても、食品として使用するとなると、高純度のものはコストに見合わず、一般の製品には製造過程で使われた他の糖類が含まれたり、他の糖と混合して使用せざるを得ないことが多く、それらの多くはう蝕の発生要因として働く。このように甘味料によるう蝕予防の効果は限定的であって現実的なものではない。
 



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