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2017年6月13日 (火)

「共謀罪の現実」 ④

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■ どのような権利が侵害されたか
 以上の通り、大垣警察が当事者の情報を収集・管理し、これをS社に提供した行為は、違法な「公権力の行使」(国家賠償法一条一項)に該当すると考えられるが、本事件は損害賠償請求訴訟なので、これによって、当事者はどのような権利を侵害されたといえるのかが問題となる。
 この点、当事者と弁護団は、①私生活秘匿権(伝統的プライバシー権)、②思想信条に関するプライバシー権、③個人に関する情報を承諾なくみだりに収集等されない自由(自己情報コントロール権)、④表現行為人格権、⑤表現の自由を掲げている。
 「個人情報漏洩」という見出しで新聞報道されたように、当事者の病歴など私生活に関する情報が収集され、提供されたことから、私生活秘匿権としてのプライバシー侵害は明らかであろう。又、当事者の思想信条に関する情報(「自然に手を入れる行為自体に反対する人物」など)も、伝統的なプライバシー権に含まれると考えられる。
 しかし、本件で収集等された情報はこればかりではない。当事者が積極的に配布したもの(新聞折り込みしたチラシなど)や新聞紙上に掲載された記事、IN上に発信したものから集められたものや、市民運動活動歴など、概して私事性や秘匿性が高くないものが多く含まれている。これらはプライバシー情報とは言いにくい。
 また、警察による情報収集等が市民運動に対する干渉であり、表現の自由に対する干渉であるという私たちの主張についても、直接的な規制が加えられていないことが問題となる。つまり、A及びBの行う風力発電施設建設に対する勉強会等が直接の妨害を受けたわけではないし、C及びDについて言えば、風力発電施設建設に関する運動にまだ関わりを持っていなかったのだ。当事者の知らないところで警察が情報を収集をし、S社に情報提供を行っていたのである。このことをもって表現の自由に対する侵害であると言えるのか。
 この点に対する回答の一つとして、「個人に関する情報を承諾なくみだりに収集等されない憲法上の自由」が考えられる。即ち、最高裁大法廷1969/12/24、判決(京都府学連事件)は、「個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有するというべきである。」「少なくとも、警察官が、正当な理由もないのに、個人の容ぼう等を撮影することは、憲法13条の趣旨に反し、許されないものといわなければならない。」として、警察(公権力)による個人に関する情報(その一つである容ぼう等)の収集が、憲法13条で保障される私生活上の自由を侵害するものであることを判示した。その後も同趣旨の判決が多数みられる。
 しかし、「個人に関する情報を承諾なくみだりに収集等されない憲法上の自由」は、それ自体では、かなり抽象的な権利であり、他の目的によって容易に制約が正当化されかねない。そこで、この自由の内実を掘り下げていく必要があると思われた。
                           次に続く。





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