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2017年6月12日 (月)

「共謀罪の現実」 ②

続き:
■情報収集等の違法性をめぐる論点 <1>
当事者と弁護団の抗議を受けた警察は、当初は、だんまりを決め込むのではないかと思われたが、前述のように、正式に文書でもって、情報収集等は「通常行っている警察業務の一環である」と回答してきた。さらに、本事件が国会の場で取り上げられた際、政府参考人として出席した警察庁警備局長も同様の答弁をおこなっている(2015/06/04、の参議院内閣委員会の議事録13p.以下)。
 ところで、警察の行う情報収集等は、警察法二条一項(「警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取り締まりその他公共の安全と秩序の維持に当たることをもってその責務とする。」)を根拠にして、任意手段による限り幅広く許されていると判断する判例が多い(前述のムスリム違法捜査など)。しかし、同条項は警察組織に関する規定であり、警察作用に関するもの(その典型は警察官職務執行法)ではないから、これを根拠に情報収集等を正当化するのは大いに疑問である。
 しかも、同条二項(「その責務の遂行に当っては、不偏不党且つ公平中性を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあってはならない。」)の存在を完全無視していると言ってよい。任意手段といわれるものの中でも、監視カメラやGPS捜査など、最近、問題点を指摘されるものが多くなっている。これらについて、法律による規制をおこなうべき時にきているとの意見が強い。警察が必要性を認めれば何でも許されるというべきではなく、少なくとも、情報収集等の目的や必要性、緊急性、手段の相当性などによってその適法性が判断されるべきであるはずだ。
 大垣警察の情報収集等は、次のような点から違法性を有するものと考えているのである。
 (1)   目的の不当性
 議事録から明らかなとおり、大垣警察は、風力発電施設建設に対する反対運動が起こらないようにするために、S社との情報交換を行っている。市民運動つぶしがその目的である。又、当事者と法律事務所の情報収集等を行ってきたのも、市民運動を「敵」と見て、これを潰すためであることも明らかである。
 もともと市民運動は、表現活動の一つであり、憲法上は― 「表現の自由」― に含まれる。したがって、警察が市民運動を敵視し、それを抑圧するために情報収集をし、第三者に情報提供する行為は、表現の自由に不当に干渉するものだ。このような公権力による干渉は、「民主政のプロセス」への干渉であって、断じて許されない(最高裁大法廷1986/06/11、判決[ 北方ジャーナル事件 ]参照)。
 (2)   恣意的な監視
 警察による情報収集等は、管内の全ての住民を対象に行われているわけではない。警察にとって「都合の悪い人物」が狙い撃ちにされているのだ。それはどのような人物かといえば、国の施策や大企業の事業に対して「ものを言う」市民が対象とされる。警察は、このような市民を、治安を害する不穏分子であると決めつけて、監視を行っているのである。
 本件においても、先に述べた人物、すなわち、A、B、C、D等。A及びBが20年以上も前にゴルフ場建設反対運動に取り組んだことなどから、「自然に手を入れる行為自体に反対する人物である」と決めつけて、監視対象とした。また、Cは、「徳山ダム建設中止訴訟を起こした張本人である」「自然破壊につながることは敏感に反対する」として、Dは「岐阜コラボ法律事務所の事務局長」であり、いずれも「原子力反対と戦争反対を唱え」る西濃憲法集会に関わることから、監視対象にされた。
 当事者の関係してきた市民運動から推察される思想信条に目を付けて監視が行われていること、しかも治安を乱す不穏分子であると、一方的に断定して、監視を行っていることなど、極めて恣意的な行為である。警察法二条二項でいうところの― 「不偏不党且つ公平中性」― に反するのだ。






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