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2017年6月25日 (日)

監視の時代とプライバシー ⑥

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 実際、情報収集型の捜査には、撮影・記録や位置情報取得にとどまらず、様々な技術が応用されており、情報化社会の今日私たちの身の回りには同種技術が溢れている。

 では、17年判決はそうした監視技術に対する規制をもたらす契機となるだろうか。そのことを考えるために、捜査機関や民間で利用されている多様な監視技術をその形態と対象別に区分して俯瞰できるよう試みたい。―― 監視技術のマッピング。

 ちなみに、監視のための手法には基本的に3つのパターンしかない。

                    監視技術の手法と対象

             (対象)     人          物          情報

パーソナル追尾            尾行         GPS         DPI

データ・リポジトリ           街頭監視カメラ   Nシステム     データ保全

トランザクション監視         顔認識        自動速度監視装置 スニファー

                           Makoto Ibusuki  2017

 第1は<パーソナル追尾>で、個別の対象を常時追跡するタイプである。人については尾行が、物の場合はGPSを使った位置情報取得が該当し、情報に対しては、ネット行動捕捉プログラムやネット上のトラフィック内容を吸い取るDPI技術等がある。

 第2は<データ・リポジトリ>で、データを一括収集しておいて後から該当する情報を検索するタイプである。街頭監視カメラが通行人の、Nシステムが通過車両の、そして通信事業者が利用者の通信情報をそれぞれ蓄積して事後的な探索に備える。

 第3は<トランザクション監視>で、特定地点を通過する情報をリアルタイムで捕捉する方法である。人の場合は顔認識技術、物の場合は車両に対する自動速度監視装置がこれに属する。情報についてはネットワーク上のパケットをモニタリングするプログラム、スニファーが典型である。

 こうした多様な監視技術に対して各国で様々な立法上の取り組みが見られる。カナダ刑法典は、「テレビカメラあるいは他の同種の電子的機器の手段によって、プライバシーに対する合理的期待を有しているような状況において何らかの活動をしている人を観察することを法執行官に許容する、本条1項で発付された令状は、裁判官によって、該当人物あるいは第三者のプライバシーが可能な限り確保されるよう考慮された特定の条件を含んでいなければならない」と規定し、令状裁判官が撮影監視につきプライバシー侵害をできる限り軽減する条件を付した上で許容する。米国ニューヨーク州刑事訴訟法も「盗聴とビデオ監視令状」に関する一般的事項を定め、盗聴令状と同様の条件で常時監視を認める。加えて、ジョーンズ判決を受けて各州でGPS捜査を念頭に位置情報取得令状に関する立法が進められているところである。

 オーストラリアのニューサウスウェールズ州では監視装置規制法が、「(surveillance device とは) データを監視する装置、聴取する装置、視覚的監視装置、追跡装置、あるいはその組み合わされたもの」と定義して包括的に監視技術を規制し、承諾の無い利用の一般禁止やオンブズマンによる査察義務を定める。

 現在日本の警察は、携帯電話に搭載されているGPS情報を取得する際、令状を得た上で通信事業者の協力によってこれを収集している。ところが、あまり知られていないが、一定のエリア内で稼働している携帯端末の情報を収集するトランザクション監視機能を持つ”偽装携帯基地局”(IMSIキャッチャー)という装置があればそうした事業者の協力すら不要になる。この装置をドローンや車両に搭載すればターゲットの携帯電話も追跡可能で特定の人物の行動を捕捉することまで(つまりパーソナル追尾も)できる。もともと軍用に開発され、諜報機関に広がり、現在は法執行機関までがこの装置を活用している。IMSI キャッチャーは近年米国で問題化しており、合衆国司法省はその使用に令状を要求するようになり、州によっては立法による規制が始まっている。

        http://masa71.com/     更新しましたので見てください。

 

 





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