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2017年6月11日 (日)

「共謀罪の現実」 ①

山田秀樹(大垣警察市民監視事件弁護団団長― 弁護士)さんは、述べている。コピー・ペー:
■ 共謀罪を先取りする事件
 岐阜県大垣市において、共謀罪の先取りとでもいうべき事件が起きている。発端は、2014/07/24付の新聞報道である。それは、「岐阜県警が個人情報漏洩」との見出しのもと、「岐阜県大垣市での風力発電施設建設を巡り、岐阜県警大垣署が事業者の中部電力子会社『S社(原文は実名)』(名古屋市在)に、反対市民の過去の活動や関係のない市民運動家だったりする氏名、法律事務所の実名を挙げ、連携を警戒するよう助言した上、学歴または病歴、年齢など」の個人情報を漏らしていたと報道した。私たちはこれを― 大垣警察市民監視事件 ― と呼ぶ。
 事件発覚直後に弁護団を結成し、県警及び公安委員会への抗議・要請活動等を行ったところ、警察からは、「公共の安全と秩序の維持」という「通常行っている警察業務の一環である」とという驚くべき回答をしてきた。すなわち、大垣警察の行っている情報収集も、S社への情報提供も、正当行為だと主張するのだ。これはあたかも、反対運動をする当事者を「組織的犯罪集団」と見立てているのだ。それで、日常的な監視を行い、協力者と情報交換を行うという、共謀罪の成立によって想定される事態が現実のものとなっているかのようである。
 当事者と弁護団は、2016/12/21に、岐阜県警の責任主体である岐阜県を被告として国家賠償請求訴訟(大垣警察市民監視違憲訴訟)を提起し、すでに第1回口頭弁論期日がもたれた。被告は請求棄却を求めるものの、警察の行為の大部分について「認否をしない」という態度で構えている。
 大垣警察とS社の情報交換の存在が明るみに出たのは、S社が警察とのやり取りを記録した「議事録」を残していたからである。弁護団は、裁判所の証拠保全の手続きによってこの議事録を入手したところ、議事録は4回分あった(これは、情報交換を4回しか行わなかったということではなく、新聞の報道により出来なくなったにすぎないのだ)。なお、議事録はホームページでご覧いただくことができる。
 この議事録には、大垣警察とS社との情報交換は大垣警察からの働きかけで行われたこと(中部電力大垣営業所、同岐阜支店経由で連絡がなされた)、目的は風力発電施設建設に反対する運動が起こらないようにするためであること、場所は全て大垣警察署内で行われたものであることが記録されていた。そして、大垣警察からS社に対して次のような情報提供されていた(少し長くなるが、議事録から警察の発言とされる部分を抜粋する。なお、当事者名は仮名とした)。
 ア― 「岐阜新聞7月31日(水)版に『大垣市上石津町で風力発電について学ぶ勉強会が行われた』 ことが掲載されたことを知っているか。」「同勉強会の主催者であるA氏やB氏が風力発電に拘わらず、自然に手を入れる行為自体に反対する人物であることをご存知か。」
 イ― A及びBは、「同じ岐阜県内で活発に自然破壊や希少動物保護運動にも参画しており、岐阜コラボ法律事務所とも繋がりを持っている。」
 ウ― 「また、大垣市内に自然破壊につながることは敏感に反対する『C氏』という人物がいるが、ご存知か。本人は、60歳を過ぎているが東大を中退しており、頭もいいし、喋りも上手であるから、このような人物が繋がると、やっかいになると思われる。」
 エ― 「このような人物と岐阜コラボ法律事務所との連携により、大々的な市民運動へと展開すると御社の事業も進まないことになりかねない。」「大垣警察署としてもそれを回避したい行為であり、今後情報をやり取りすることにより、平穏な大垣市を維持したいので協力をお願いする。」
 オ― Bが、「風車事業に関して一部法律事務所に相談に行った気配がある。」
 カ― 「Aは、岐阜コラボ法律事務所の事務局長である『D』と強くつながっており、そこから全国に広がってゆくことを懸念している。現在、Dは気を病んでおり入院中であるので、速、次の行動に移りにくいと考えられる。」
 キ― 「Cの動きについて」「弁護士法人『岐阜コラボ』が毎年5月3日(憲法の日)に主宰する『西濃憲法集会』では、原子力反対と戦争反対を唱えている。」「Cは、徳山ダム建設中止訴訟を起こした張本人である。」「反原発・自然破壊禁止のメンバーを全国から呼び寄せることを懸念している。」
 この議事録から、大垣警察が組織的に、長期的かつ日常的に、当事者の各個人情報、及び「岐阜コラボ法律事務所」(正式には、「弁護士法人ぎふコラボ法律事務所」である)の情報を収集し、これを管理してきたことが分かる。これは正に、警察による市民の監視という他は無いのだ。
 このような公権力による市民の監視に関して、最近ではムスリム違法捜査事件や自衛隊情報保全隊訴訟によってその実態と問題点が明らかにされているところであるが、本件は、より一般的に、警察の警備課(いわゆる公安警察)によって行われ、そして民間企業に対して積極的に情報提供が行われたところに特徴がある。警察といえば、刑事事件の捜査と犯人の検挙など市民生活の日常的な安全確保の機能を果たす「市民警察」を思い浮かべるが、「公安警察」は全く別の存在である。公安警察は、犯罪とは直接に関わりのない情報収集活動(一般情報収集活動)を日常的に行っている。このような公安警察の活動が、無制限に許されるのかどうかを問うことが私たちの訴訟の一つである。





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