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2017年6月23日 (金)

監視の時代とプライバシー ③

続き:

 先述の「17年判決」の事案はこういうものだった。警察は自動車を使って高速で長距離を移動する窃盗団の動きを探知するため、半年以上にわたって合計19台もの車両にGPS発信装置を無承諾の状態で取り付けて尾行監視を実施していた。一審の大阪地裁はこの手法を違法と判断して証拠を排除した。しかし、大阪高裁はこれを破棄して必ずしも違法とは言えないとした。他の事件について名古屋高裁で立法がなければ許容されないとする判決が出ていたこともあり、上告審となった最高裁は2016年10月この事案を大法廷にて回付することにした。

 今回、大法廷は全員一致でGPS発信装置を用いて位置情報を取得する捜査手法に就いて「合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法」だと位置づけた上で、「個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害する」ものと評価し、現行法にある既存の令状(捜査差押え、検証等)では実施困難で立法がなければ許されない処分だと断じた。注目されるのは、17年判決が位置情報に関して憲法35条が保障する「侵入、捜査及び押収を受けることのない権利」の対象として「住居、書類及び所持品」に準ずる”私的領域”というカテゴリーを創設し、憲法35条にはこの領域に侵入されることのない権利が含まれることを明らかにした点である。つまり、住居のような言わば他人から見えない空間のみならず、オープンな公共空間であってもプライバシーが保障されるというのだ。

 最高裁が、私的領域という新用語をつくってまで公共空間における位置情報が保護されるという結論を導いた背景には技術的進歩の存在があるだろう。米国最高裁におけるノッツ判決からジョーンズ判決への転換も同じ理由であった。即ち、我が国に於いても、ユビキタスアクセスによってもたらされた情報通信環境の飛躍的発展と、位置情報のようなセンシティブな個人に関わる情報を網羅的かつ継続的に収集できるという”地引網的(dragnet-type)”な情報技術が完成したからに他ならない。



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