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2017年6月22日 (木)

監視の時代とプライバシー ②

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 米国メリーランド州警察では、違法な薬物の製造を疑った被疑者の車両にビーバー(日本風にいうとポケベル)を3日間セットしてその信号を追跡した。その後そのデータを基に捜索差押え令状を請求し起訴に至った。高等裁判所はこのビーバー追跡監視に令状が必要だとしたが、1983年、米国最高裁は車両が公道を走っていたことを理由に、被疑者には憲法で保障されるプライバシーへの合理的期待はなく令状は不要だと判断した(ノッツ事件)。誰かがどこかに向かっていることは公道では明るみに出ているものであり、また、ビーバーは対象車両を追跡中に見失った場合に位置を確認する補助的手段に過ぎず常時監視とは言えない、と言及されていた。

 このノッツ事件から約30年、時代は格段に進化したテクノロジーにより安価で長時間の、そして大規模な監視技術を我々に与えた。ネットワークを通じて監視データをスマートフォンで常時取得することも、コンピュータに蓄積することも可能となった。2012年、米国最高裁は、警察が薬物犯罪の嫌疑で28日間にわたって車両にGPS発信装置を無断で取り付けて位置情報を取得していた事案で、令状が無ければGPS監視は行えないとの判断を全員一致で示したのである(ジョーンズ事件)。

 もっとも、ノッツ事件が手放しで公道上の監視を承認していたと考えるのは早計に過ぎる。判決は、「被上告人側が主張するように、万一そうした地引網的(dragnet-type)な法執行が行われる時が来たなら、異なる憲法原理が適用可能かどうかを判断することになるだろう」と予言していた。即ち、ジョーンズ事件での追尾監視行為は、ノッツ事件のように追尾や尾行と同視する見方では正当化できない、正に、”地引網的監視”に該当する技術だと評価されたとみることができるだろう。

 ジョーンズ判決の多数意見はGPS発信装置の車両へのセットしたことが”不法侵入”を構成するという理屈を立てたが、補足意見を書いたアリート判事らは、端的に長期にわたる位置情報取得がプライバシー侵害に当たるかどうかを問うべきだとした。この点は、次にみる我が国の今回の大法廷判決と呼応ずる考え方であった。承諾の無い車両への監視装置設置が問題なのか長期の監視自体が問題なのかにつき意見は分かれるものの、米国最高裁判事たちの結論は令状が必要という点で一致していた。




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