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2017年6月18日 (日)

TOPICS : ”発症予防・重症化予防をめざして ③

続き:
3.  歯肉に潰瘍が形成される理由
 歯肉に潰瘍が形成されるようになったのは、歯面に病原性のあるバイオフィルムが形成されたためである。しかし、歯肉に潰瘍が形成され、歯肉炎と歯周炎、即ち歯周病になるのは、哺乳動物では人類あるいは人類に飼育されている動物だけである。同様にう蝕に苦しんでいるのも人類だけである。人類に特有の口腔疾患の根本原因は何だろうか。それは、現代人の食べ物に原因があると考えられる。
 食物のアミノ酸や糖類は、それぞれ特有の味を有する。これは、アミノ酸や糖類の持つ味の情報が、ヒトの舌に存在している味細胞の集合体(味蕾)に伝えられ、味細胞がそれを電気信号として脳に伝えているからだと理解されている。具体的には、アミノ酸や糖類は、味細胞の味覚受容タンパク質の受容体に結合できる。味覚受容タンパク質の受容体にアミノ酸や糖類が結合すると、味細胞から脳に味覚情報の電気信号を送る。そのためにヒトが味を感じることができる。しかし、アミノ酸が長く連なったタンパク質や糖類が長く連なったデンプンには一般に味が無い。これは、高分子物質は味覚受容体に対して立体障害を起こし、結合できないためだと考えられる。
 人類は、土器を発明し、肉を「煮る」、米や野菜を「炊く」、食物を「貯蔵して発酵する」ことによって高分子物質の低分子化に成功した。そのことによって、アミノ酸が長く連なった味の無いタンパク質や糖が長く連なった味の無い炭水化物つまり「旧石器時代」の食事から、低分子化した味のある美味しい現代食へと食事内容が変化する。これはすべて土器の発見による成果である。特に、それまでは食べることができなかった穀類を主食へ押し上げたことは極めて大きな変化であった。
 しかし、人類にとって食事のおいしさの代償は大きかった。口腔細菌の異常な増殖に伴う病原性のあるバイオフィルムの形成が始まったのである。食材が高分子から低分子へ変わると、アミノ酸や糖類の持つおいしい味の情報が味細胞へ伝わる一方で、口腔細菌がエネルギーとしてアミノ酸や糖類を直接菌体内に取り込むことができるようになる。腸内細菌にとっては、高分子タンパク質も胃腸のタンパク質分解酵素(ペプシン、トリプシン、キモトリプシン)により分解されるので、食材が高分子でも低分子でも差異はないが、口腔細菌は高分子タンパク質をエネルギーとして利用することができないので加熱していない生肉では口腔細菌は増殖出来ない。高分子の炭水化物であるデンプンも十二指腸や膵臓のアミラーゼで分解されるので、腸内細菌にとっては、食材の炭水化物の分子量による増殖の差異は無い。しかし、口腔細菌は高分子炭水化物をエネルギーとして利用出来ないが、単糖類(ブドウ糖、果糖)と二糖類(砂糖、麦芽糖)を菌体内に取り込むことは容易にできる。デンプンは加熱すると糊(アルファデンプン)化する。糊化したデンプンは唾液アミラーゼで分解されて麦芽糖になる。つまり、歯肉に潰瘍が形成されるようになったのは、現代食が、味のある低分子物質や柔らかく唾液アミラーゼで麦芽糖に分解できるアルファデンプンに変わったため、口腔細菌が利用できるエネルギーが増加し、菌数が増加するだけでなく、菌体の内外にエネルギー貯蔵用の多糖体を形成するようになりデンタルプラークがバイオフィルム化したのである(バイオフィルムとは糖タンパク質や多糖類であるグリコカリックスで被覆されたデンタルプラークのことである)。菌体外の多糖体の一部は粘着性を持ち、抗原をマスクして免疫系のアタックから巧妙に逃れるために歯面に大量のバイオフィルムが形成されるようになった。バイオフィルム細菌は、直下のエナメル質やセメント質あるいは象牙質を脱灰してう蝕を発症させるほか、歯肉のポケット面に潰瘍形成して、歯肉炎、歯周炎と持続的な菌血症を発症させていく。このような病原性のあるバイオフィルムが形成されるのは、土器や鉄器で加工した特別な食事をしている現代人と現代人に飼育されている一部の動物だけだと思われる。





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