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2017年6月19日 (月)

TOPICS : ”発症予防・重症化予防をめざして” ④

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4. 食文化の変化と顎の変化
 糖尿病など代謝系の生活習慣病は農耕開始以来の狩猟採集民として暮らしていた頃の食材(旧石器時代食:パレオダイエット)で改善されることがランダム化比較試験で示された。旧石器時代食とは、赤身肉、魚、シーフード、卵、野菜、果物、ベリーとナッツを基本とする食材だ。腸管におけるヒトと腸内細菌の栄養吸収においては、食材が含む栄養素の組成が重要だ。200万年前から始まり、人類が石器を使用した農耕を始めるまでの期間を指す旧石器時代は、無土器時代、先土器時代とも言って土器がなく、穀物を人類のエネルギー源として用いることが出来なかった時代である。
 日本では、旧石器時代の終わりは16000年前とされる。土器で煮炊きが可能になるまで、米、麦などの穀類はヒトのエネルギー源にはならなかった。当時の主要なエネルギー源はナウマン象などの大型動物の生肉や加工肉、川を遡上する鮭などの魚介類であったと考えられる。日本に生息していたナウマン象は15000年前に絶滅してしまった。当時の日本人が食べ尽くしたのであろう。青森県で発見された縄文土器は、放射性炭素年代測定法で16500年前とされていた。少なくなったナウマン象代わりに、縄文土器で米、麦などの穀物を煮炊きする食文化が日本の縄文人によって生まれたと考えられる。
 腸内細菌にとって、肉を「煮る」、米や野菜を「炊く」などの食材の加工形態はそれほど重要ではない。腸では食材はほぼ完全分解される。ところが、口腔細菌にとって、肉を「煮る」、米や野菜を「炊く」などの食材の加工形態は重要な意味を持っている。まず、食材が柔らかくなることによって、顎の発達が不良になり、歯が萌出するスペースがなくなって、不正咬合が生じやすくなる。人類が旧石器時代、すなわち農耕開始以前の狩猟採集民として暮らしていた頃の頭蓋骨に残る歯の健康は不正咬合の無く完璧に近い。同一栄養素でも固い餌と柔らかい餌を与えるのでは、動物の顎の発達に違いが出ることを動物実験で確認している。
5. 現代型医療問題の発生
 現在、人類が直面している医療問題は、16000年前に始まったナウマン象などの肉、川を遡上する鮭などからドングリなどの種子類、米、麦などの穀物への主食の変化、土器を用いた長時間の加熱や土器を用いた発酵による食材の低分子化という調理方法の劇的な変化に、人体が適応できない状態、つまり人類進化に追いつかないことに起因がある。大きく変化した食文化と人類進化のミスマッチが生じた結果、三大口腔疾患(う蝕・歯周病・不正咬合)と様々な生活習慣病が発症している。
 生活習慣病に対しては、食材を(旧石器時代食:パレオダイエット)に変え、調理方法だけ現代風にすることで、比較的簡単にその根本原因(穀物の多い食生活)を取り除くことができる。しかし、三大口腔疾患であるう蝕・歯周病・不正咬合の解決方法は難しい。
 特に歯周病と不正咬合は、その原因が食材の変化だけでなく加熱や味付けなど食材の調理方法にあるため、根本的な解決方法はなく深刻である。歯周病・不正咬合の臨床症状に対処するための歯科治療は行われても、口腔疾患の根本原因である煮炊きをして噛まずに食べられる柔らかい食材を加熱して味を引き出す食生活を人類から取り除くことはできないと考えられる。
 また、すでに弥生時代から始まる穀類の多い食生活で人口が極端に増加しているため、穀物を排除して旧石器時代食を普及させることが、貧しい人々の飢餓に直結するのは自明のことである。穀物を家畜の餌にして食べ物を旧石器時代食にするためには、地球上の人口も減らす必要が生じ、それは事実上不可能である。従って、人類が地球上で生存を許される限り砂糖や米、小麦が現実的な食糧として存在し続ける。その結果、人類とう蝕の戦いはこれからも永遠に続くと考えられる。





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