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2017年6月17日 (土)

TOPICS : ”発症予防・重症化予防をめざして” ②

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重層扁平上皮では細胞が新生して剝がれ落ちるまで、約4週間のターンオーバー(細胞の入れ替わり)を繰り返している。新細胞が粘膜表面にとどまる期間は約2週間しかないので、粘膜付着した細菌も粘膜細胞とともに剥離し、集積してバイオフィルム化することができない。ところが口腔にはバイオフィルム定着と増殖に最適な硬組織 (歯や義歯)が存在する。硬組織は剥離しないので一度バイオフィルムが形成されると自然に除去することが難しい。100億個前後の微生物集団の中に歯が萌出すれば、バイオフィルムは必ず形成される。一般にバイオフィルムは浮遊細菌よりも単位体積でみると1000倍密集している。このように歯が萌出している口腔は体内でも最も多くの微生物がバイオフィルムを形成する部位である。そのために口腔において最近は腸内細菌と同等の約700菌種(一人では平均300菌種以下(花田ら未発表))という多様な菌種が検出されている。また、口腔で生息する細菌は毎日唾液とともに腸内に運搬されているので、口腔は歯周病菌が増殖すると唾液とともに腸へ運ばれた時に腸管に悪影響を与えることが報告されている。
2 .  歯肉の潰瘍
 元来口腔の粘膜には重層扁平上皮が存在して約1週間のターンオーバーを繰り返し、常在微生物の体内侵入を許さない組織構造を持っている。しかし、歯面に大量のバイオフィルムが形成されると細菌の内毒素や外毒素が歯肉の重層扁平上皮をアタックし、歯肉のポケット側に潰瘍形成する。潰瘍とは皮膚や粘膜を覆う上皮組織を欠損し、上皮組織の最下層で細菌分裂させ新生させる基底層が破壊された状態である。潰瘍面では毛細血管が露出し、透過性の亢進や出血が見られる。歯肉のポケット側から生じる潰瘍が歯肉炎や歯周炎である。この潰瘍は、歯面バイオフィルムを除去しない限り治癒しないので、バイオフィルムの細菌が常に血液中に入り、日常的に菌血症を引き起こす。3週間歯磨きを停止すると、歯肉炎を悪化し、グラム陽性菌の外膜の構造体(LPS あるいは内毒素:エンドトキシン)が血液中に入るので、エンドトキシン血症を引き起こすことが確認されている。歯肉炎は、1週間で自然治癒する口内炎よりも長期的に見れば危険な疾患である。菌血症の発症による生活習慣病の発症の因果関係を述べるには、今後のコホート研究が必要であるが、歯周病と菌血症の発症との因果関係にはすでに強いエビデンスが認められている。



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