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2017年7月 5日 (水)

「1強多弱」 ②

続き:
                    何でも閣議決定
 次は本丸の安倍首相。今年の憲法記念日、首相はもはや身内と言える「美しい日本の憲法をつくる国民の会」(日本会議系)に向けたメッセージなどで、「9条第1項、2項をそのままに、自衛隊を条文に明記し、2020年の五輪開催と同時に施行したい」旨を訴えた。これは、2012年の「自民党憲法改正草案」と明らかに食い違う。「草案」は、9条2項の「戦力の不保持、交戦権の否認」の部分を削除し、「前項(1項)の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない」とした上で、新たに「9条の2」に国防軍を明記するというものだった。しかし安倍首相は、2015年強行採決した安全保障関連法案を根拠に、自衛隊をあえて「国防軍」とは呼ばずに、実質9条の「骨抜き」に手を着け始めたのだ。
 安倍氏は、この変更を「改憲草案9条」にかかわった石破茂氏を差し置いてぶち上げた。同氏は、「あの憲法改正草案なし、ということが総裁の発言一つで決まるのだったら、(改憲は)もう誰もやらなくなりますよ」と不快感を露わにした。衆議院予算委員会で、野党が首相の改憲提案は立憲主義に反すると批判すると、安倍首相は、「傲慢」にも、「あれはあくまでも自民党総裁としての見解で読売新聞に相当詳しく書いてあるから、ぜひ熟読してほしい」ととぼけた(ところが、読売記事は「安倍首相」と記載)。
 この後、首相と党総裁の職務は「同一人物でも立場によって区分される」とする閣議決定がなされた。ちなみに、昭恵夫人は「私人である」としたのも閣議決定だ。「風をよむ」は、毎日新聞(5月9日)の統計によれば、第2次安倍政権になって、国会議員の質問主意書に対する政府答弁に、「(質問の)意味するところが必ずしも明らかでない」という文言を閣議決定で挿入する割合が急増している、と紹介した。安部政治は随所に「閣議決定」のコーティングが施されている。
                    ファンタジーと陰謀のあいだ
 さて、安倍首相の笑劇的(ファルス的)な改憲論に対し、憲法学者木村草太氏が以下の要旨でコメントした。「9条に自衛隊を明記するとして、仮に個別的自衛権までというラインで国民投票にかけたとすると、これが可決されれば、2015年の安保法制は違憲になってしまう。一方、集団的自衛権込みで国民投票にかけると、これが否決される可能性は高く、大博打になる」。流れによっては政権にとって相当なダメージになる。また、「9条の第1項、2項を残して3項に自衛隊を書き加えるとなると、国民投票をしても国民は何を聞かれているのか意味不明である」(TBSラジオ「萩上チキ・Session-22」5月3日)。木村氏は、安倍発言を「非常にファンタジー」と切って捨てた。
 だが、安倍首相は自説を空論だと思っていないらしい。安保法制に基づく軍事オプションを実行してはばからない。南スーダンへのPKO部隊の派遣、北朝鮮の核・ミサイル開発けん制のための日米合同演習など、「アベ・ファースト/ジャパン・セカンド(対米従属外交)」を掲げ、「自民改憲草案」まで脇に寄せ、無試験入学に踏み切ろうとしている。
 この奇怪な成り行きに対し、『サンデーモーニング』のコメンテーター、西崎文子東大教授は、安倍晋三氏が師と仰ぐ極右ブレーン伊藤哲夫氏の存在を指摘。伊藤氏の”入れ智慧”の詳細は日本政策研究センターの機関誌『明日への選択』(2016年9月号)に詳しい。「一言でいえば、『改憲はまず加憲から』という考え方に他ならないが、ただこれは『三分の二』の重要な一角たる公明党の主張に単に適合させる、といった方向性だけにとどまらないことをまず指摘したい。むしろ護憲派にこちら側から揺さぶりをかけ、彼らに2016年のような大々的な『統一戦線』を容易には形成させないための積極戦略でもある、ということなのだ」と切り出す。「(平和、人権、民主主義には)一切触れず、ただ憲法に不足しているところを補うだけの憲法修正=つまり『加憲』なら、反対する理由はないではないか、と逆に問いかけるのだ」と指南。
 最後に、「前文に『国家の存立を、全力をもって確保し』といった言葉を補うこと」を提言し、「憲法第9条に3項を加え、『但し前項の規定は確立された国際法に基づく自衛のための実力の保持を否定するものではない』といった規定を入れること」と伊藤氏は説く。西崎文子氏は、こうした”奸計”を明るみに出すことをメディアに求めたのだ。
 5月23日のTBS『NEWS23』に出演した田原総一朗氏は、2016年9月安倍首相自らが、「安保法制後、アメリカからの改憲要請がめっきり減った」と語ったと伝えた。まさに『明日への選択』刊行の時期と重なる。




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