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2017年7月26日 (水)

認識システムの最先端 第3回 ②

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 2次元の指紋画像の横1ライン分のデータを見てみると、占断線と指紋隆線が垂直に近い状態で交わるところは、隆線の微細な間隔が繰り返し観察されている。垂直性が崩れると占断波形の周期性がずれてくる。私(梅崎)、この波形を見た瞬間、音声認識手法で使っていたケプストラム(cepstrum : spec の逆読み+trum)分析が使えると確信した。音声認識を行う場合、発声された内容を高精度認識するためには、6月号歯科医師会雑誌に紹介したLPC分析により、声帯の個人特性(基本周波数もしくはピッチ周波数と呼ばれている)成分を大方除去する。音声波形をスペクトル分析すると、声帯の基本周波数が繰り返し波形として観測される。この成分を除去するのにケプストラム分析が用いられる。この手法を用いて、指紋画像中に含まれている指紋らしき(渦巻状態の隆線)のスペクトルのエネルギー成分を調べたら個人差はあるが、なんと90%以上に及んだ。つまり、米国の研究者たちがスペクトル分析で高精度な指紋照合法を実現できなかったのは、指紋らしさを考えなしに、そのエネルギーに引っ張られてわずかな個人性を生かしきれなかったわけだ。

■個人認証装置1第号の実用化

 前記手法を、発話訓練機器開発でお世話になった名古屋の中央発條株式会社(C社)でプレゼンして、自動車の鍵の代用としても使えると宣伝した結果、共同研究予算と開発人員を付けていただいた。これにより、セキュリティシステム開発の産学連携プロジェクトが実現した。当初は、三角プリズムを用いたエリア型の指紋センサーをC社に開発してもらい、指紋画像データベースの構築と認証アルゴリズムの高性能化に挑戦した。約2年後、従来方式では登録が困難だった「かすれ指紋」へ対応したこと、指紋全体画像の保持を不必要とし、指紋画像の流失を防止すること、特徴情報から指紋画像を再生することは原理上不可能であることが高く評価された。C社の努力で他社とのコンペに勝利し、実用化に漕ぎつけた。初期の製品価格は若干高めであったが、小型・高精度・高速という面が評価された。製品「You Pass」は、大手のセキュリティメーカーや鍵メーカーにOEM として採用された。

 この間、C社と共同で指紋認証装置の特許申請の行い、基本特許の部分をまとめて学会に論文投稿した。その査読結果は、初めての不採録通知であった。その主たる理由として、「認証率が高すぎて信頼性に欠ける。」と記してあり、悔しい経験をした。

                                        <続く>



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