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2017年7月 7日 (金)

「御用新聞」という自己否定 ②

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 そして、文書を無いことにしようとする官邸が懸念していたのが、前川氏の存在だった。「前川さんは事務方のトップとして加計学園に獣医学部を認可したいきさつを知っている。官邸は黙らせようと工作したが、本人は真実を明らかにするつもりだ。そんな時に大新聞=読売の記事が出た。所謂、こんな男の話などいい加減だという印象操作のために誰かがリークしたのだろう」。この前川氏を知る人はそう指摘した。
 前川氏のインタビュー記事が、5月25日発売の週刊文春と朝日に載った。問題の文書について、「昨年秋に担当の専門教育課から説明を受けた際、示された」と存在を証言、「あるものが、ないとされてはならないと思った」と語った。
 同じ日に発行された週刊新潮には、「安倍官邸が曝露した『文書リーク官僚』の風俗通い」という記事。読売と同様、雑誌記者が新宿歌舞伎町の店で常連らしい女性に前川氏の写真を見せ、来店していたかを確認。「文書をリークしたのは前川氏」と指摘する、朝日やNHK「関係者」のコメントを並べた。
 興味深いのは記事にある次の記述である。「安倍官邸は警察当局などに前川前次官のスキャンダル情報を集めさせ、その友好的なメディアを使って取材させて、彼(前川氏)に報復するとともに口封じに動いたという。事実、前川前次官を貶めようと、取材を進めるメディアがあった」。自らの記事を棚に上げて、「あなたが来る3日前から、読売新聞の二人組がここに来ていた」と常連らしき女性の証言を載せた。「あなたと同じ写真を見せながら(……)何人もの女の子を食事に連れ出し、色々と話を聞き出そうとしていたよ」などと書かれている。事実なら、取材に走らされた読売新聞の記者はどんな思いで記事を書いたのか。
 官邸から情報を得たのか、それとも上司から指示されたのかわからない。記者なら、前川氏のスキャンダルを取材する自分の役回りは理解していたろう。記者が最初に教わるのは、「この事実は記事にして世の中に伝えるべきことか」と自問自答することだ。会社という枠にはまると、そんな仕事も断ることができないのか。それとも嬉々として聞きまわったのか。
 「昨秋、首相官邸幹部に呼ばれ『こういう所に出入りしているらしいじゃないか』と注意を受けた。何故読売に報じられたかわからない」。前川氏は朝日で「出会い系バー」への出入りを認め、そう語った。「注意」したのは杉田和博官房副長官だという。警察庁警備局長として公安警察を仕切った官僚だ。昨年秋といえば、加計学園の認可に文科省が抵抗していた頃、その中心にいた次官が官邸に呼ばれ、スキャンダルになりうる情報を突き付けられた。副長官はなぜ文科省次官のプライベートな行動を知っていたのか。
 『スノーデン、監視社会の恐怖を語る』(小笠原みどり)に次の一節がある。「2002年2月、警視庁は新宿歌舞伎町に監視カメラ50台を設置した。私は警視庁記者クラブを通じて新宿署のモニタールーム取材を申し込んだが、断られた。その理由に驚いた。『通行人のプライバシーを侵害する恐れがあるから』。(……)モニタールームで何が観察され、何が記録されているかは、誰も検証することが出来ない」。小笠原さんは、新宿歌舞伎町のカメラの設置場所を確認して、地図を作ったという。「カメラは風俗店の入り口だけでなく、ほとんど外灯も無いラブホテル入り口も見下ろしていた」。
 警視庁が監視カメラの導入を本格化させたこの頃、今ではお馴染みになった「顔認証システム」が開発された。監視カメラの記録から顔を探せる。調べたい人物の顔認証をインプットすれば、膨大なデータから顔を拾い、夜の行動さえ警察が把握できる社会になった。監視カメラは犯罪を見張っているだけでは無い。監視の目に晒されるのは、一般の人たちだ。日常を監視する夥しいデータの中から、特定人物の行動を探る。知られたくないことも含め私的行動を警察が握り、何かの時に「警告」として使うことも出来る。こんな風にして、見えない目が前川前事務次官に注がれていたのだろう。
        





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