« Science 漢方を知る ④ | トップページ | Science 漢方を知る ⑥ »

2017年7月 2日 (日)

Science 漢方を知る ⑤

続き:
4. 口内炎、歯痛における治療のバリエーション(分型論治)
 漢方の処方は、患者の体質、疾患の増悪ファクター(寒冷、湿気、疲労など)、臨床症状の違いによっていくつかのタイプに分類した上で行われる。これは、漢方でも中医学でも同じである。中医学では、この方法を分型論治と言う。ここでは、口内炎と歯痛に関する分型論治を紹介してみる。口内炎、歯痛の表(略→後で示す)。患者の体質・症状を細かくタイプ分けして処方するので、一つの疾病でも、処方にいくつものバリエーションがあることが分かる。
1)口内炎
 口内炎は、痛みの程度によっては、嚥下困難や会話困難などを引き起こし、患者のQOLを著しく低下させてしまう。よく知られているアフタ性口内炎のほか、ヘルペス性やカンジダ性、ニコチン性の口内炎、あるいは神経性、薬物性、さらには自己免疫性を疑うもの、鉄欠乏やビタミン不足によるものなど、その原因は多岐にわたる。一方で治療方法はというと、原因が明らかなもの以外には、含嗽やステロイド等の対症療法にとどまるのが現状である。
 精神的ストレスによって発症したり増悪したりする口内炎が多く、自律神経失調症の人によくみられる。特に神経質で胃腸が弱く、胸焼けや心窩部の膨満感があり、口内炎を繰り返すものには、半夏瀉心湯が使い易い。その他に使い易いものとして、体力が中等度で、のぼせや口内炎の熱感がある場合には温清飲が、また、比較的体力があり、口腔内の炎症や熱感が強い場合には黄連解毒湯がある。
2)歯痛
 検査所見に異常がないにも関わらず歯痛を呈する場合や、繰り返し発症して治りにくい歯痛が漢方薬の治療対象となる。
 使い易いものとして、歯痛や歯肉痛、あるいは口腔粘膜の腫脹や痛みに対しては、体質を考える必要のない立効散が有効。また、歯牙と歯周組織に異常がないにも関わらず歯痛があり、物を咬むと痛くて力が入らない場合には、六味丸や八味地黄丸がある。六味丸は、手足のほてりやのぼせ等を伴う場合に、また、しばしば四肢の冷え、腰や下肢の脱力感、腰痛、頻尿に伴う場合には八味地黄丸を用いる。
5. まず自分自身では ~使ってみたい失敗が少ない漢方薬~
 漢方に慣れるには、又、親しむには、自分自身の不調に対して使ってみて、効果を実体験することが近道だ。ここでは、失敗の少ない(作用が穏やかで、有害作用が現れない)漢方薬を幾つか紹介する。
1)全身状態の改善(抗病反応を賦活する薬)
(1) 補中益気湯
   身体的、精神的両面の慢性消耗状態、アトニー体質(内臓下垂、脱肛、起立性調節障害、無力性体質)の改善に用いる。慢性疾患、外科手術などによって全身倦怠、微熱、盗汗、動悸等の症状が持続的に存在する場合や症状が長引く感冒や慢性気管支炎にも用いられる。食後、吸い込まれるような眠気に悩む人や疲れると微熱がでる人にもゆうこうである。
(2) 十全大補湯
   手術前後の体力の増強・回復、抗がん剤の副作用の軽減、失血後の貧血改善等に用いる。先の(1)と共に虚弱体質、全身衰弱、全身倦怠等の消耗状態改善に有効。顔色がくすんで体力が疲弊していることが使用目的となる。また、痛みを和らげる作用もあるので、疼痛性疾患にも応用することもある。皮膚や粘膜のびらんや潰瘍にも有効なので、口内炎潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎にも良い。構成生薬の地黄によって、食欲不振や下痢を引き起こすことがあるので、その場合には、補中益気湯などへ変更を検討する。
2) 痛み
(1) 桂枝加朮附湯
   寒冷や湿度の上昇、低気圧の接近で増強する慢性疼痛などに用いられる。慢性関節リウマチ、肋間神経痛、三叉神経痛、肩関節周囲炎、四肢関節や顎関節の疼痛、筋肉痛、腰痛、変形性膝関節症等に用いる。「冷えると古傷が疼く」「梅雨時に古傷が疼く」症状に有効で、胃腸にやさしい漢方薬である。身体を温める処方であるので、急性かつ熱性(局所の発熱・発赤・腫脹)の炎症所見のある疼痛には不用である。
                    続く。




バリ

« Science 漢方を知る ④ | トップページ | Science 漢方を知る ⑥ »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: Science 漢方を知る ⑤:

« Science 漢方を知る ④ | トップページ | Science 漢方を知る ⑥ »