« Science 歯科医療におけるCT・MRIの基礎・臨床 ② | トップページ | Science 歯科医療におけるCT・MRIの基礎・臨床 ④ »

2017年7月29日 (土)

Science 歯科医療におけるCT・MRIの基礎・臨床 ③

続き:
3) 歯科用CTについて
 原理:被写体をはさんでX線管球と検出器を対向させ、円錐状(コーンビーム)にX線を照射し、高感度の二次元検出器を利用して被写体の画像を得る方法。歯科用CTは照射範囲を1回転することで三次元情報を得るので、同装置の位置付けはパノラマX線検査と似ているのもその特徴の1つである。
 用いられる二次元検出器は、従来は真空管のI.I.(Image Intensifier)を用いるものが多かったが、現在ではFPD(Flat Panel Detector)が主流となっている。医科用CTとの大きな違いは、歯科用CT装置は使用はFPDだから散乱線が多く、正確なCT値が得られにくい点であり、CT値ではなく、相対的な画素値を用いて画像化していることである。ちなみに、C
TシミュレーションはCT値で画像構成されているため、不正確な3D画像を表示する可能性がある点も留意する必要がある。
4) 歯科医師が知っておくべきMRIの原理
 MRIは磁気共鳴現象(MR現象)によって生じる生体内組織の水素原子からの信号をコンピュータにより画像化するもの。MR現象は1946年 Blochと Purcellらによって発見された物理化学現象であり、水素原子は各々生体内で原子核を中心に、いわゆる、こまのみそすり運動を呈しており、静磁場にさらされると原子核が特定の周波数の電波(ラジオ波)に共鳴して、自ら電波を発信する現象である。
 このMR現象はすべての原子に起きるものではなく、陽子数、中性子数のいずれか一方あるいは両方が奇数の場合のみ起こるとされている。よって検査対象となる原子は水素(H)、炭素(C)、リン(P)とされているが、臨床にてヒトの信号が取れ、撮影時間等において検査可能となるのはヒトの体内の水素が一般的な対象となる。この後の1973年に Lauterber、Mans-field がMR現象を画像化することに成功して、1980年に初めてRSNAにて臨床用のMRIが発表された。彼ら4人はこれらの業績により、後にノーベル賞の栄誉に輝いている。
5) MRI検査の特徴と検査時に注意すべき点
 MRIは磁場を利用するためX線検査機器とは異なる多数の長所を持っている。被曝がないことが大きな特徴であり、また血流情報が得られることより、近年では脳ドック等で隠れ脳梗塞や動脈瘤の診断にも広く臨床利用されている。しかしながら短所は医療事故を起こす可能性があるのでMRI検査前に十分注意をする必要がある。
 歯科の開業医が近医のMRIを持つ一般病院に患者のMRI検査を依頼する時は、特にペースメーカー保持者や手術既往のある脳内に磁性体のクリップ等を持つ患者には、注意が必要である。ペースメーカーの停止やクリップ脱離により脳出血を起こす可能性があるため、検査禁忌であり、CTなど他の画像検査に変更する必要がある。また刺青やマスカラ等の化粧品は金属を含有しているため、やけど等の問題を起こすことがあり、十分な問診と注意が必要である。よって事前に十分な体内の磁性体のチェックや問診を行い、MRI検査時に事故の起きないよう注意をしなければならない。
 また画像に関して種々の障害陰影が生じることがあり、①動きによるものと、②磁性体によるものが顎口腔領域のMRI検査では問題となる。それぞれMRI像のゆがみや不鮮明な画像の原因となるため知っておかなければならない。基本的に非磁性体の金属補綴物、すなわち白金加金や金パラジウムなどの金合金は障害陰影が生じない。しかしながら磁性体となるニッケルクロムやステンレススチールを主体とする歯科用金属装置や磁性アタッチメントはMRIの大きな障害陰影となるため画像検査が困難となることがある。特に磁性アタッチメントを用いる患者は大きな障害陰影を口腔に生じるため、磁性アタッチメントの装着部位や大きさによって、頭頸部の画像検査に影響を及ぼすこともあると知っておくべきだ。
 また、これら口腔内の磁性体の金属補綴や修復物ばかりでなく、歯科治療時の磁性体の切削バー破片が、歯肉に迷入、沈着することによっても障害陰影を生じる。よって歯科治療自体が口腔癌の患者の画像診断に影響を与える原因を作る可能性があり、我々歯科医師は歯科治療時に切削バーによる歯肉の損傷を最小限にするべきである。





« Science 歯科医療におけるCT・MRIの基礎・臨床 ② | トップページ | Science 歯科医療におけるCT・MRIの基礎・臨床 ④ »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: Science 歯科医療におけるCT・MRIの基礎・臨床 ③:

« Science 歯科医療におけるCT・MRIの基礎・臨床 ② | トップページ | Science 歯科医療におけるCT・MRIの基礎・臨床 ④ »