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2017年8月13日 (日)

イギリス→日本 苦闘する賃貸世代の住宅問題 ④

続き:
3 スコットランド住宅政策改革
 ボトムアップから「賃貸世代」の住宅問題を「政治化」し、解決が可能であることを如実に示したのが、ニコラ・スタージョンの登場とその実践であろう。
 これまでUKの一員としてイングランドの住宅政策と歩調を合わせてきたために深刻な住宅問題に直面していたスコットランドは、スコットランド国民党を率いらスタージョン首相の主導で、イングランドの施策と一線を画すことになる。
 2015年10月に民間住宅借家人法が議会可決。この法律により、第1に、これまでのASTsにかわってスコットランドの民間賃貸借家権が導入され、借家人は、その借家期間が終了したことを理由に、また借家人に過失が無い場合に、簡単に退去を要請されないようになった。また、家主は売却もしくは家主自身が居住することを理由に、その財産を取り戻すことができるようになった。
 第2に、家賃の値上げは、三か月前の通告による年一度に限定され、自治体は大臣に家賃圧力ゾーンを申請することで、借家人の家賃上昇レベルに上限( cap、消費者物価指数+1%以内)を設定できるようになった。
 「クライシス」(スコットランドにおけるホームレス問題への圧力団体)代表のジョン・スパークスは、上記の法律の意義に就いて、イギリスにおけるホームレスの主要原因となっているASTsを終わらせ、過失が無い理由で立ち退きをなくすことにある。
 さらに注目すべきは、スコットランド政府が、35年以上も継続してきたRTBを廃止したことである。
 先に述べたように1980年にサッチャー政権のもとで導入されたRTBは、UK全体で250万戸以上の住宅を売却、これにより、1979年末に全住宅ストックの30%以上を占めていた公営住宅は17%(2015年)まで減少した。イングランド政府は、2012年4月以降、それまで逓減していたRTBのディスカウント率を大幅に引き上げ、市場価格の50%程とした。これに対して、やはり50%程のディスカウント(2002年以前の借家人、それ以外は20~30%)を実施していたスコットランド政府は、2016年8月から公営住宅と住宅協会の借家人についてRTBを廃止。また2010年までディスカウント率についてイングランドと歩調を合わせてきたウェールズも、RTBの廃止決定。
 RTBの廃止に就いて、スコットランド住宅協会連合代表のマリー・テイラーは、「スコットランドにおいてRTBが実施されてきた30年以上の間に、人気のある団地の良好なストックを中心に50万戸もの社会住宅を失ってしまった。RTBの終了により、我々は、低所得の人々が支払い可能な家賃の社会住宅ストックを保持できる」と、また地方自治体・住宅局長連盟政策主任のトニー・カインは、「RTBの終了で、社会住宅の家主は長期的な計画のもとで資産と収入をより効果的に管理し、1981年以来はじめて社会賃貸住宅を増加させるべく投資を促すことができる」と『ガーディアン』紙で語っている。
 また「シェルター」(スコットランド)所長のグラエム・ブラウンは、「RTBが過去のものとなった現在、絶対的に必要なのはアフォーダブル住宅の供給へと行程を変更することであり、スコットランドの住宅危機にしっかりと立ち向かうには、少なくとも毎年1万2000戸のアフォーダブル住宅を建設する必要がある」と主張。
 こうした要請にスコットランド政府は、新たな議会年度となる2016年度から20年度までのアフォーダブル住宅の供給計画を、前議会年度(2011年度から15年度)の3万3490戸と比較して67%増しの5万戸に変更、そのうち3万5000戸は社会住宅となっている。なお、教育費にかんして付言すれば、スコットランドの大学は授業料が無料であり、生活費給付奨学金もローンでなく給付になっている。




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