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2017年8月 2日 (水)

~最近の認知症を取り巻く動向~ ①

平野裕彦(東京都健康長寿医療センター部長― 医学博士)さんと枝広あや子(同センター研究員― 歯学博士)さんの共同研究文をコピー・ペー :
 日本の認知症の人数は複数の統計値が出されているが、2013年の厚労省研究班(朝田班)から出された資料が認知症施策データとして使われている。65歳以上の高齢者の認知症患者数と有病率推計では、2012年は認知症患者数が約162万人で、65歳以上の高齢者の7人に1人(有病率15.0%)であったが、2025年には約700万人、5人に1人になると持込まれている。朝田班の試算によると2025年の認知症推計値は675万人だったが、長期の縦断的な認知症の有病率調査を行っている九州大学久山町研究のデータから730万人へ上方修正されている。こういった中、歯科医師にも認知症への積極的な医療・介護等を通した対応が求められている。ここでは、歯科医師として理解すべき認知症を取り巻く最近の動向も含め概説しよう。
1. 平成29年道路交通法改正
 認知症の人が急増する中、様々な認知症への対策がなされ、平成27年1月に国家戦略として認知症施策推進総合戦略(以下、新オレンジプラン)が発表されたのもその一環である。また直近で注目すべき対策としては、平成29年3月12日の道路交通法改正である。今回の改正は、後期高齢者ドライバーによる死傷事故が増加(平成16年~26年で後期高齢者の死亡事故は75歳以下と比べ約2倍に増加)していることの原因として、認知機能低下が注目されたことが背景にある。認知症の人の運転実態の調査結果では、多くの人が認知症発症後も運転を継続しており、家族がその危険性を認識しているにもかかわらず運転中断に至っていないケースが多いことも報告された。
 こういった調査結果を慎重に検討した結果、今回の道路交通法改正において高齢運転者(70歳以上)の運転免許更新手続きの改正と臨時認知機能検査制度および臨時高齢者講習制度の新設の2点であろう。高齢運転者(70歳以上)の運転免許更新手続きの改正は、更新期間が満了する日における年齢が75歳未満の者について、高齢者講習の合理化が図られた。また、年齢が75歳以上の者については、認知機能検査の結果に基づいて、より高度化または合理化が図られ、内容や時間等の異なる更新時の高齢者講習が実施されることとなった。
 次に臨時認知機能検査制度および臨時高齢者講習制度の新設内容として、75歳以上の運転免許を持っている者が「認知機能が低下した場合に行われやすい一定の違反行為(18基準行為:信号無視、交通区分違反など)」をした場合、臨時の認知機能検査を受けることとなった。また、18基準行為をして臨時の認知機能検査を受けたもので、検査結果が前回と比較して悪化している場合等(「認知機能の低下が自動車の運転に影響を及ぼすおそれがあるという基準」に該当した場合)には、認知機能検査の結果に基づいた臨時の高齢者講習を受けることとなった。こういった臨時の認知機能検査や臨時の高齢者講習を受けない場合や、医師の診断書を提出しない場合には、運転免許の取消しまたは停止となる。さらに更新時および臨時の認知機能検査等で「認知症のおそれがある」と判定された者については、臨時の適性検査を受けるか、一定の要件を満たす医師の診断書を提出することとなった。
 一方で本改定には課題もある。現代は、移動手段として車に依存する社会であるり、地方になるとその依存度は高くなる。重要な移動(交通)手段である自動車運転を止めることで認知症の人、さらには家族の生活にも著しい不具合が生じる可能性があり、また日常生活の仕方も大きく変える必要が生じることが予想される。住み慣れた街にもかかわらず、移動手段を奪われることにより地域との交流が減少し、閉じこもり、認知症の進行等につながる課題も指摘されている。
 この道路交通法改正には医師が直接関与するが、地域在住高齢者の移動手段を規定する方向で法律が変わったことは、かかりつけの歯科医師としても患者への継続的な関わりを持つために知っておく情報の一つと考える。





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