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2017年8月26日 (土)

東芝はどこへ―日本の原子力行政の破綻 ⑩

続き:
8 ヘッジファンドがほくそ笑む

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 ここでエフィッシモ・キャピタル・マネージメントが登場する。エフィッシモは2017年2月以降東芝の株を買い集め、その持株比率は2017年3月末現在で8.14%となって一躍東芝の筆頭株主に躍り出た。その後、4月7日にエフィッシモは買い増しを行い、その持株比率は9.84%となっている。エフィッシモは、村上ファンドで一世を風靡した村上世彰氏の部下が運営するヘッジファンドである。エフィッシモの東芝株の取得単価は概ね200円程度である。
 エフィッシモが東芝の株を買い集めたのは、東芝の200円程度の株価が、(彼らの目論む東芝の企業価値からすると)安いからにすぎない。エフィッシモの目算によれば、東芝メモリはそれ単独で2兆円前後の買収価格がつくくらいなのだから、東芝の社会インフラ系事業等の企業価値を考慮すれば、東芝全体の企業価値は4兆円程度と考えてもおかしくない。200円の株価に東芝の発行済株式数42億株を乗じると8400億円となる。200円の株価を前提とすれば、4兆円の企業価値のある東芝の過半数の株式が4200億円(8400億円×0.5)で買えるのである。ならば東芝株を300円未満で買い続ける限り、最悪、東芝を切り売りしても巨額の利益が出るというのがエフィッシモの皮算用であろう。
 東芝が2期連続債務超過となって上場廃止になろうが、エフィッシモの皮算用は影響は受けない。監査法人が監査意見を出さなくてもそれは関係ない。東芝が上場廃止になって株価が暴落してくれた方が安く東芝株が買えるので、エフィッシモにとってはむしろ好都合なのである。
 エフィッシモによる東芝株買いで驚くのは、彼らの投資戦略が、東芝の会社更生法申請があり得ないという確信に基づいていることである。日本国政府は、米国政府に対して、米国政府の融資保証83億ドルの代位弁済と従業員等の雇用継続を約束させられている。東芝の会社更生法申請は、日本政府の対米公約を破ることになるので、東芝は会社更生法の申請はできないのである。エフィッシモはこのことを読み切っているのだ。日本政府は、一民間企業の経営破綻に介入せざるを得ない原子力行政弱みを逆手に取られ、ヘッジファンドの暗躍を許しているのだ。
 『世界』2017年4月号でも指摘したように、東芝問題を解決するためには、会社更生法と米国連邦倒産法の同時申請しかありえない。それを、世耕大臣が、一民間企業の経営問題のために、のこのことアメリカまで行ってお伺いを立てるものだから、米国政府に足枷をはめられてしまった。おかげで倒産できない東芝には、株主から損害賠償請求や合弁先企業からの持分買戻請求が次々と押し寄せ、さらには今後、米国政府の融資保証の代位弁済請求、並びに、中国、インド、英国からの追加原価の請求がさけられない。会社更生法はこれらすべての請求を遮断できるのである。
 現在の東芝は銀行監視下にあるので、会社更生法の申請は困難を伴うであろうが、東芝がその気になればやってできない訳ではない。東芝が会社更生法の申請をやらないのは、東芝にその気がないからで、東芝にその気がないのは、銀行ではなく日本政府がそれを望まないからであろう。東芝は、日本政府の原子力政策の重要な推進業者で、日本原子力地位協定の一翼さへ担っている。





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