« 東芝はどこへ―日本の原子力行政の破綻 ⑧ | トップページ | 東芝はどこへ―日本の原子力行政の破綻 ⑩ »

2017年8月25日 (金)

東芝はどこへ―日本の原子力行政の破綻 ⑨

続き:
7 2兆円でも足りない!
 東芝の迷走は、2016年12月27日に『日本経済新聞』が「東芝が、米国子会社WECの原子力発電事業で数千億円規模の特別損失を計上する見通し」との記事を掲載したことから端を発する。この時点での東芝は、2015年7月に発覚した1562億円の不正会計問題を2016年3月期決算で修正処理した後、一転して半導体事業が好調で、利益の増額修正を繰り返していた。そんな中で、終わったはずのWECの減損問題は、日本社会全体にとって青天の霹靂となった。
 結局、この時の「数千億円規模の特別損失」は、東芝が2016年12月第3四半期決算で計上した7166億円の「のれん減損損失」として決着したことになるが、この結果、東芝は2017年3月決算期末において5400億円の連結株主持分債務超過となってしまった。2期連続債務超過となると上場廃止となるので、東芝は、なんとしても2018年3月期末までには連結株主持分の債務超過を解消しおかなければならない。このために東芝に残された最後の手段が半導体事業の分社化による持分売却である。
 東芝が2017年2月14日に公表した「2016年度第3四半期および2016年度業績の見通し並びに原子力事業における損失発生の概要と対応策について」と題する業績見通し資料によれば、この段階での東芝は、「2600億円程度の資本政策」により債務超過を解消しようとしていた。「2600億円程度の資本政策」とは、半導体事業の分社化による株式の一部売却のことをいう。東芝の目論見は、半導体事業の売却価値を1兆5000億円程度と想定し、その経営支配権のない50%未満の売却計画で、これを東芝再生計画の骨子としたのだ。
 ところが、その後東芝は、4月11日公表の未監査2016年12月第3四半期において、S&Wの買収に伴うのれんの減損7166億円以外に、1100億円の無形資産の減損をやってくれた。私(細野)が『世界』2017年4月号で、「価値のないのれんのブランドネームに何の価値があるのか?」と批判したことに対して、東芝は、WECのブランドネーム503億円を中心とする1100億円の無形資産を減損し、さらにそのドサクサに紛れて、その他の関連損失434億円を計上してしまった。
 東芝は、2017年4月1日に半導体事業の分社化を行い、これを東芝メモリとして完全子会社としたのであるが、これらの追加損失の結果、東芝の債務超過の解消は少数株主権売却→経営支配権売却→全株売却へとエスカレートし、その売却希望額も、1兆5000億円→2兆円→2兆円以上へと膨らんでいった。
 東芝メモリの売却は、産業革新機構とベインキャピタル、韓国SKハイニックスなどで構成される日米韓連合を優先交渉先として検討されており、その売却価格は2兆円とされている。ところがまことに恐ろしいことに、東芝は、実は、2兆円の売却では2018年3月期の債務超過回避が見通せない。
 東芝メモリの分離帳簿価格は5923億円なので、東芝がその全株を売却した場合の売却益は、1兆5000億円の場合が9077億円、2兆円の場合が、1兆4077億円、2兆5000億円の場合が1兆9077億円となる。ただし、これは、今回東芝本体に発生した1兆5900億円(株式の清算損5900億円、保証引当損7935億円、貸倒損失1865億円、その他関連損失200億円の合計)のWECの整理損が税務上損金として認められる場合のことで、認められない場合には、この売却益に対して30. 9%の実効税率が課税されるのだ。
 WECの整理損が税務上損金として認められるためには、チャプター11の申請だけでは駄目で、その再生計画が認可される必要がある。東芝は、7月末に予定されているWECの再生計画を予定通り提出し、速やかにその認可を取らなければならない。
 さて、WECの再生計画の認可の前提として、東芝メモリの売却価格が、1兆5000億円と2兆円並びに2兆5000億円のそれぞれケースについて、2017年3月末の株主資本債務超過額5400億円、今後の追加損失予想最低額9933億円、2018年3月期の予想利益2000億円を加減して、2018年3月末の株主資本を計算すると、東芝メモリの売却価格が1兆5000億円の場合は4256億円の債務超過、2兆円の場合は744億円の資産超過、2兆5000億円の場合は5744億円の資産超過となる。なんと、東芝メモリの売却価格は2兆円でもまだ足りないのである。





« 東芝はどこへ―日本の原子力行政の破綻 ⑧ | トップページ | 東芝はどこへ―日本の原子力行政の破綻 ⑩ »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 東芝はどこへ―日本の原子力行政の破綻 ⑨:

« 東芝はどこへ―日本の原子力行政の破綻 ⑧ | トップページ | 東芝はどこへ―日本の原子力行政の破綻 ⑩ »