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2017年8月21日 (月)

東芝はどこへ―日本の原子力行政の破綻 ⑤

続き:
4― 2 口が裂けても言えない。
 そもそもS&Wは米国大手エンジニアリング会社CB&I の全額出資子会社であり、WECとS&Wは、2008年以来、コンソーシアムにより、米国サザン電力のボーグル3号機・4号機と南カルフォルニア電力ガス社のV・C・サマー2号機・3号機の原発建設を共同で行っていた。
 ところが、米国の同時多発テロと日本の東日本大震災の影響を受け、米国原子力規制委員会(NRC)による新規原発建設の許認可が格段に厳格化された。WECとS&Wがコンソーシアムで行う原発建設は、航空機の追突対策のための設計変更により許認可審査やり直しとなり、その再認可が下りたのは、当初着手から4年後の2012年のことである。
 米国原子力規制委員会の新たな審査基準では、航空機が追突しても放射性物質の放出が起きない強度を原発に求めるのである。巨額の追加原価が発生することは素人が考えても分かりそうなものであろう。しかも、WECとS&Wによるコンソーシアムの場合は、設計変更による許認可審査のやり直しなので、それ以前4年間にかけた工事原価は無駄になる。この追加原価の存在を東芝が知らなかったというのは無理ではないか?
 WECと(S&Wの親会社である)CB&Iは、設計変更による追加原価の負担を巡って、相互に相手を訴えるという訴訟合戦を争っていた。訴訟は、2012年から3年間に亘って行われてきたが、2015年の夏、その判決が出る前に、WECとCB&Iは、WECがS&Wを買収することにより、お互いの訴訟を取り下げることで合意し、この合意を記載した買収契約書を2015年10月27日付で締結した。追加原価の負担を争っていたのであるから、少なくともWECは、買収以前の段階で、S&Wとのコンソーシアムで発生していた巨額の追加原価を認識していたのである。
 監査法人は、東芝が追加原価を2015年10月27日時点で知っていたと疑い、東芝はこれに対して2016年12月まで知らなかったと白を切る。PwCあらた監査法人は、その主張の背景にクラスアクションによる巨額損害賠償を控え、東芝は、経営陣の特別背任容疑を抱えている。両者が一歩も引けない膠着状態になっているのであるが、状況証拠からすれば、この対立は東芝に圧倒的に分が悪い。
 東芝の救いは、巨額の追加原価の存在を知っていた経営陣が、2015年夏の東芝の不正会計の責任をとってすでに退任していることにある。PwCあらた監査法人は捜査機関ではないので、退任した元取締役の監査を行うことはできない。
 ここで四面楚歌の東芝にとって思いがけない味方は、2016年に一旦クビにした新日本監査法人であろう。東芝が、仮にPwCあらた監査法人の主張を受け入れて、2016年3月期の決算修正による訂正報告書を出すとしても、その訂正報告には、新日本監査法人の合意が必要となる。新日本監査法人は、2015年夏に発覚した1562億円の不正会計に対する虚偽証明に対して、金融庁による21億1100億円の課徴金処分を受けて、東芝の監査をクビになったばかりなのである。
 新日本監査法人は、2016年3月期の最終年度監査において過年度の不正会計処理をすべて修正し、適正意見を出し直したことになっている。その禊の2016年3月期決算において、6357億円の追加原価の未計上を修正するのだから、新日本監査法人はまたもや虚偽証明をやってくれたことになる。そうすると金融庁も再度の処分をせざるを得ないが、前回の課徴金処分を上回る処分としては監査法人の解散命令しかない。
 『日本経済新聞』は2017年6月3日付朝刊で、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、東芝の会計監査について、新日本監査法人に対して約35億円の損害賠償請求を東京地裁に提訴したことを報じている。新日本監査法人は満身創痍なのである。新日本監査法人は、東芝が知らなかったという「嘘」を強く弁護してくれるであろう。





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