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2017年8月12日 (土)

イギリス→日本 苦闘する賃貸世代の住宅問題 ③

続き:
2 「賃貸世代」の政治化
 OECDレポートが表明したトリクルダウン「経済」の拒絶と富裕層への高い課税という主張は、ボトムアップの政策を実現させる「政治」が重要な課題となることを示唆している。新自由主義から決別し、分配政策を見直す政治勢力(スコットランド首相ニコラ・スタージョン、イギリス労働党首ジェレミー・コービン、アメリカ上院議員バーニー・サンダースなど)の登場である。
 こうした政治勢力は、不安定な雇用、学費の支払い、高い家賃に直面している若者の強い支持を取り付けている。それらに共通するスローガンの一大項目は、持家取得の困難となるなかで、アフォーダブル(所得レベルに応じた家賃負担と家族数に応じた居住水準が確保されていること)な賃貸住宅の供給に向けた住宅政策の再構築にある。
 2017年4月18日、イギリスのテリーザ・メイ首相は6月8日に総選挙を実施する意向を表明した。これを受けるコービンは、マンチェスターでのキャンペーン(5月8日)において、「第1の優先課題は、住宅危機への対応であり、社会的にアフォーダブルな家賃の公営住宅建設と民間賃貸への適切な規制である」と表明、「住宅は、持家を所有できず、高騰する家賃と苦闘している「賃貸世代」にとって中心的な問題である」と語っていた。ここでいう「社会的にアフォーダブル」とは、公営住宅が縮小するなかで、その割当てが、子どもを持つ家族、妊娠している女性、ホームレス世帯が優先されている現状から、「賃貸世代」にもアクセス可能な「社会住宅」へと変革していくことを意味している。
 因みにイギリスでの「賃貸世代」は、民間賃貸への居住を余儀なくされている人々であると同時に、アフォーダブルな賃貸住宅を要求する非営利の圧力団体=「賃貸世代」(Generation Rent: GR) の名称になっている。GRは、2016年5月に実施されたロンドン市長選の政策課題において住宅政策をNO.1に押し上げ(調査によれば住宅67%、交通51%、健康35%、警察31%、経済開発26%)、労働党のサディク・カーンを勝利に導いた。
 コービンの労働党は、総選挙にむけて5月16日に「マニフェスト」を発表した。そこでは、高等教育について、①大学授業料が3倍の年間9000ポンドに上昇したこと、②生活費給付奨学金は廃止されローンとなったこと、③卒業する学生は、平均44000ポンドの負債を抱えながら就労を開始しなければならないこと、が指摘され、給付型の奨学金の再導入、授業料の廃止が主張されている。また、民間賃貸については、①家賃規制(インフレ水準以下に)、②借家人に仲介料を課すことの禁止、③劣悪な住戸を回避するための新たな住居基準の導入、④18~21歳へ住宅手当廃止の撤回が、公営住宅については、①RTBの棚上げ、②政府による自治体の建設休止を解除し、30年間に亘る大規模な社会住宅を供給することが、明記されている。
 なおコービンはさきのキャンペーンで、「イギリスがアイルランドのようにEUレベルで法人税の引き下げ競争に加担することを拒否すべく、保守党による(法人税の)17%への削減プロセスを逆転させる意向」を表明、これにより、194億ポンドを確保し、さらにトップ5%の富裕層への所得税増税(64億ポンド)などを積み上げることで、総計486億ポンドの財源取得を見込んでいる。
 




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