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2017年8月23日 (水)

東芝はどこへ―日本の原子力行政の破綻 ⑦

続き:
6 次々と押し寄せる賠償請求。
 WECの通算損益を分析したが、このことはWECとの手切れ金が1兆5900億円で済んだということを意味しない。WECの破綻の契機として、東芝には、株式買戻請求及び損害賠償請求が次々と押し寄せているからである。現段階で判明している諸請求とその損害見込額の一覧表(略)がある。
 そこで、先ず株式買戻請求については、2017年2月、IHIは、そのWECの持ち株3%につき、東芝に対して、プットオプションの権利行使を通知した。IHIは、WECへの出資を行う際に、その所有持分を当初出資額相当で東芝に売却できる権利(プットオプション)を付与されている。東芝はこのプットオプションを拒否できないので、2017年5月には、IHI所有持分を当初出資相当額の189億円で買戻さなくてはならない。チャプター11で価値のないWECの株を買い戻すのだから、買戻し金額の189億円そのまま損失となるが、この損失は2017年3月期決算に計上済。
 東芝がプットオプションを付けてWECに出資してもらったのは、もう一社、カザフスタン政府100%出資のカザトムプロムがある。カザトムプロムのWECに対する出資比率は10%で、その当初出資相当額は5億4000万ドル(647億円)。権利行使可能期間は2017年10月1日以降となっているが、カザフスタン政府との外交関係上、カザトムプロムの持ち株は647億円で買い戻さざるを得ず、この損失は2017年3月期決算に計上されず。
 ところで、仏法人ENGIE社は、2017年4月3日、東芝に対して、ニュージェン社に対する持分40%の買収請求を行った。ニュージェン社は、英国内セラフィールドにおいて、その持株は東芝60%、ENGIE社40%なのだ。東芝とENGIE社の株主間契約では、WECのチャプター11申請が東芝の帰責事由となるため、東芝はENGIE社のニュージェン社持分40%を買い戻さざるを得ず、買戻金額は153億円となる。
 ニュージェン社は、WECのAP1000型原発3基を、100億ポンドの予算で、セラフィールド北西ムーアサイドに建設する計画であった。そのWECが、チャプター11を申請して、今後は海外原発の新規建設は行わないという。すなわちニュージェン社はその存在意義と存在価値を失っている。買戻し持分153億円は減損せざるを得ないが、ということはニュージェンの東芝持分60%相当額230億円も価値を失っているということなので、ニュージェンの買戻しによる損失は合計383億円(153億円+230億円)となる。
 東芝は、2011年5月に、スマートメーターの製造販売を行うスイス法人ランディスギァを買収したが、その後同年8月に、産業革新機構がランディスギァの40%の持分を買ってくれたので、東芝の持分は60%になっている。東芝と産業革新機構との間の株主間契約によれば、2017年7月以降、産業革新機構からの要請があった場合、東芝と産業革新機構は、共同して、一定期間、産業革新機構のランディスギァ持分の売却先を検討することが義務付けられている。この売却検討期間内に売却先が確保できない場合は、東芝は、産業革新機構のランディスギァ持分40%を公正価格で買い取らなければならない。
 東芝と産業革新機構の関係を考えると、産業革新機構がまさか瀕死の東芝に対してランディスギァ持分の買収請求をすることは無いであろうが、東芝がこんなことを言うからには、それほどランディスギァの業績が思わしくないということで、ということは、ランディスギァに対して計上されている「のれん」1432億円は減損されなくてはならない。
 次に、株主からの損害賠償請求を見てみると、2015年7月に発覚した不正会計処理による株価下落を原因として、米国カルフォルニア州において、米国預託証券等の保有者による集団訴訟が提訴された。この損害賠償請求は、2016年5月20日に原告敗訴になったものの、同年7月25日、原告は上訴して係争中である。訴額は不開示。
 日本国内においても、2016年8月に日本トラスティ・サービス信託銀行による120億円の損害賠償請求、2016年6月に海外機関投資家からの166億円の損害賠償請求がともに東京地方裁判所に提訴され、現在係争中であるが、東芝はこれらの請求に対して合理的見積可能額を引当計上している。
 これらの損害賠償請求は、2016年12月第3四半期報告書による開示項目であるが、『世界』2017年4月号で指摘したように、これら以外に、三菱UFJ信託銀行、みずほフィナンシャルグループ、三井住友トラスト・ホールディングス、資産管理サービス信託銀行が損害賠償請求を起こす予定となっている。東芝の不正会計による株価下落の潜在的な訴訟債務は約1兆円なので、今後少なくとも2000億円程度の損害賠償債務が発生すると見なくてはならないであろう。





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