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2017年8月18日 (金)

東芝はどこへ―日本の原子力行政の破綻 ③

続き:
3 クラスアクションが狙っている。
 ここでPwCあらた監査法人の主張は、6357億円の追加原価はS&Wの買収に伴う取得価格配分手続の過程で出てきたのだから、その費用の発生はS&Wを買収した2015年10月27日以前であったことは異論の余地がなく、従って、この費用は、2016年3月期の連結財務諸表に計上されるべきというものである。
 これに対して、東芝の主張は、6357億円の追加原価は専門家による追加原価調査の見通しが2016年12月に出てきて初めてその存在が認識できたもので、それ以前は分からなかったのだから、この費用は、追加原価の存在が認識できた2016年第3四半期の損失として計上されるべきというものだ。
 両者は、追加原価の発生時期についての見解に相違はないものの、その追加原価認識の時点について意見が対立している。ここで企業会計原則は費用について発生主義の原則を採用しているので、現時点で6357億円の追加原価が判明している以上、議論はPwCあらた監査法人に有利に見える。しかし、発生主義会計以前の認知科学の基礎概念として、物理的に費用が発生してもそれを認識できなければ会計処理を行う事ができないできないことから、認識不可能な発生費用は認識時点の費用とする会計慣行が認められており、東芝の主張も成立する訳ではない。要するに、東芝は頑としてPwCあらた監査法人の主張を受け入れない。
 東芝と監査法人の対立は、追加原価6357億円を2016年3月期決算に計上するか、2017年3月期決算に計上するかを巡る損失の期間帰属の問題だ。東芝が既に2017年3月期末で5400億円に及ぶ巨額の株主資本債務超過に陥っている以上、この期に及んで期間帰属などどちらでもいいではないかと思うかもしれないが、これがそうはいかない。この費用の期間帰属は、PwCあらた監査法人及び東芝双方にとって、生死を分けるほどの死活問題なのである。
 PwCあらた監査法人の立場からすれば、この追加原価が事実として2016年3月期以前に発生している以上、(その追加原価が反映されていない)2016年6月第1四半期と9月半期財務諸表に虚偽記載ということになる。これらの財務諸表に対して無限定適正結論の監査意見を出していたPwCあらた監査法人の監査意見は虚偽証明になるのである。恐怖に駆られたPwCあらた監査法人は、2017年4月11日になって、急遽、既提出の監査意見を撤回し意見差控とした。
 PwCあらた監査法人の主張通り追加原価が2016年3月期に計上されるとすれば、PwCあらた監査法人が受任する2017年3月期は、9500億円の大赤字どころか2400億円の黒字決算ということになる。この場合、PwCあらた監査法人は適正意見を出すことになるが、2017年3月期の2400億円の黒字決算を適正とするPwCあらた監査法人が、同じ2017年3月期の9500億円の大赤字に対してこれまた適正ということはできない。
 すでにWECは米国連邦破産法第11条を申請し、米国の裁判所がそれを受理している。しかも、この破産申請は、米国内に立地する原発建設が原因となって行われたものでその建設工事を行っているのは米国法人たるWECで、その会計監査も米国のPwC(PwCあらた監査法人がメンバーファームとして参加する国際会計監査事務所)が行っている。米国のクラスアクション(米国集団訴訟)が虎視眈々とディープポケット(資金力のある被告)を狙っているのである。PwCあらた監査法人は、東芝の監査意見に対して妥協の余地がない。





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