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2017年8月 1日 (火)

Science 歯科医療におけるCT・MRIの基礎・臨床 ⑥

続き:
6. 顎口腔領域へのMRIの臨床応用
1) 顎関節疾患へのMRIの臨床応用
 顎関節に関係しては単純X線検査では描出困難であった関節円板の直接描出が可能となった。被曝の無い無侵襲なMRI検査は顎関節診断の歯科臨床に広く普及している。
2) 顎骨骨髄疾患への応用
 下顎骨は比較的厚い皮質骨の内部に海綿骨を有し、成人の海綿骨は骨髄を含む intertrabecular space を持つ骨梁のネットワークである。海綿骨の表面積は皮質骨の10倍であり、血液中のCaのホメオスターシスに重要な役割を果たしている。骨髄は造血を営む肉眼的に赤色を呈する赤色骨髄と、脂肪細胞に転換した黄色を呈する黄色骨髄に分けられる。
 出生時には下顎骨は造血を有する赤色骨髄であるが、加齢により前歯から臼歯部、下顎枝方向へと黄色髄に置換していく。20歳以上ではほとんど黄色髄になるためMRIでは脂肪の信号となる。これら骨髄の異常を検出するためにはMRIを用いた赤色や黄色骨髄の年齢による正常骨髄の分布を知ることが必修である。MRIによる下顎骨骨髄の正常者の検討では、25歳以上でもまれに下顎頭に赤色骨髄が存在する正常者がいる。骨髄疾患は従来のX線診断では検出困難なことが多かったが、骨髄を直接イメージングできるMRIの導入により、骨髄疾患の早期判定や骨髄炎においては軟組織の異常も容易に描出可能となっている。
3) 顎骨腫瘍、嚢胞性疾患への鑑別診断への臨床応用
 MRI検査にて、従来のX線診断で鑑別が困難であった顎骨の嚢胞と腫瘍の鑑別が可能となった。特にエナメル上皮腫は特徴的なMRI所見を有し、他の嚢胞性疾患との鑑別が容易に行われるようになった。また歯原性嚢胞のうち歯原性角化嚢胞は内容液の角化物により T2 緩和時間が短縮するためMRIの信号強度が異なる。そのため、他の嚢胞との鑑別が容易となった。
4) 悪性腫瘍への臨床応用
 全身のリンパ節は約800個で、そのうち約300個が頭頸部に存在。口腔領域の悪性腫瘍の進展は、顎骨や周囲軟組織への直接浸潤以外にリンパ管を通じて、これらの頸部リンパ節への転移が多数を占める。CTやMRI の体軸横断像にて、直径1.0cmの転移リンパ節には約10億個の腫瘍細胞が存在するといわれる。これら頸部リンパ節の転移により手術時のステージングによる手術方針や、患者の5年生存率等の予後を大きく左右するため、リンパ節転移の検査は非常に重要である。CTやMRIにてリンパ節の部位、大きさ、形態、造影効果、内部壊死や節外浸潤等にて転移リンパ節の鑑別診断を施す。現在、MRIはCT検査と共に癌および癌転移の診断能を大きく向上させている検査である。
 歯科医療にて、画像診断はここ10年で急速に増加した。これら画像診断の恩恵を我々歯科医師は患者に有効に活用しているであろうか。
 筆者(金田)が留学していた米国ボストンのハーバード大学医学部の耳鼻科眼科専門病院の放射線科は奇形と悪性腫瘍の疾患が多く、費用対効果を十分考慮しながら、それら疾患の画像評価は常に検査内容や検査プロトコールが十分練られ、患者の治療に最大限の効果を画像がもたらしていた。我々も、これら進歩の著しいデジタル画像の特徴を十分理解し、常に貪欲に吸収し、長所を最大限に利用し、患者に貢献することは医療人としての責務であろう。





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