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2017年9月14日 (木)

首相官邸は「メディア真空地帯」 ②

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 森友学園も加計学園も問題の根源は「権力の私物化」だ。すべてが解明されてはいないが、首相夫妻のお友達は優遇されていた。権力者のワガママを通すには、どこかで行政を歪めなければならない。指示があったか、忖度したかはわからない。ルールを歪めることで特段の計らいをすれば、誰かが手を汚す必要がある。
 森友学園では近畿財務局がゴミ処理費を目いっぱい計上した。役人言葉で言う「エンピツを舐めた」。獣医学部の新設は加計学園にしか当てはまらない条件で内閣府が募集した。国政全体から見ると些細な事件かもしれない。だがその根っこにある「行政の私物化」は権力の病気だ。追及を免れるために行政文書を破棄し、口裏合わせをするといった「隠蔽工作」は、行政のモラルを破壊するのだ。
 『週刊朝日』(2017/06/23)、で前川氏は、官邸による介入の例を三つ挙げている。一つは、天下り問題にからむ、再就職等監視委員会が文科省に職員のメールを提出するように求めた。外務省と内閣府のOBも関わっていたため、それぞれの役所にメールが提出されることが伝えられた。ところが御用納めの夜、前川氏は杉田官房副長官に呼び出された。官邸に出向くと「外務省と内閣府が絡むメールは送るな」とくぎを刺された。違反を示すメールは文科省に限定され、監視委員会の調査は中途半端な幕切れとなった、という。
 あとの二つは役所の人事の口出しだ。選挙や市場と無縁な官僚の世界は、人事権を握る者が権力を持つ。菅官房長官が霞が関に睨みが利くのは人事を掌握するからで、その下で差配するのが実質的な権限を握る杉田氏だ。人事への口出しは役所が所掌する審議会へも及ぶ。杉田氏は、文化功労者を選ぶ文化審議会の分科会委員の名簿から二人の委員を外すよう、前川次官に指示した。一人は「安保法制に反対する学者の会」のメンバーであり、もう一人は雑誌で政府に批判的な意見を述べていた。安保法制への考え方が翌年の文化審議会の人選に影響したのである。
 和泉氏も文化審議会の人事に介入した。日本イコモス委員長の西村幸夫氏を委員から外せと言ってきたのだ。背景には世界遺産の申請があった。長崎県の軍艦島や山口県の松下村塾、萩反射炉など八県23資産をひとまとめにした産業遺産は2015年7月、世界遺産に登録された。朝鮮半島からの徴用工を使っていた歴史もあり産業遺産は韓国・中国などの理解が得られないという観点から、文化審議会は角度を変えて、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」という名目で推薦候補に挙げた「産業遺産の旗振り役は加藤六月元農水相の長女で安倍首相と親しい加藤康子さん。和泉氏もかなり早い時期から一緒に取り組んでいた」と前川氏は述べている。官邸は内閣官房に有識者会議を作り、文化審議会とは別に産業遺産を候補として推薦。文化庁と官邸の二つの案がぶっつかり、官房長官の裁定で産業遺産が推薦された。日本イコモスはユネスコの諮問機関イコモスの国内組織だが、産業遺産には消極的だった。西村氏は、任期を終える際、更新を許されなかった。「見せしめ」と関係者は感じ取った、と前川氏は言う。
 意に染まない役人や委員は外す。人事権を使った締め付けは文科省に限ったことではないだろう。安倍官邸の特徴は、オトモダチ優先と意見の異なる者の排除であることは、身近で取材する番記者は知っていたはずだ。





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