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2017年9月 2日 (土)

国連特別報告者を「断罪」する新聞 ②

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 これが大きく変わるきっかけとなったのは、1985年にテレビ朝日のワイドショー「アフタヌーンショー」で起きた、中学生やらせリンチ事件だ。郵政大臣は初めて文書での行政指導を行い、今日の法解釈につながるものへと転換していく。停波を命じたことはないが、行政指導は85年から2015年までに36件あり、このうち実に8件は第一次安倍政権(06年~07年)でのことであった。民主党政権(09年~12年)下では無かったが、自民党が政権復帰すると、16年に高市総務大臣がNHKに対して行い復活した。
 これだけではない。安倍首相は、NHKの経営委員に自分の支持者らを次々に送り込んだ。第一次政権では古森重隆氏(富士フイルムホールディングス社長)、小林英明氏(弁護士)。第二次政権では百田尚樹氏(作家)、長谷川三千子氏(埼玉大学名誉教授)、本田勝彦氏(日本たばこ産業顧問)、中島尚正氏(東京大学名誉教授)といった面々だ(肩書は当時)。
 自らの政権益のために、NHKのラジオ国際放送まで利用する。菅喜偉官房長官が総務大臣だった06年、北朝鮮拉致問題を重点的に取り上げる命令を出した。こうした任命や命令は違法ではないかもしれないが、明らかに濫用である。
 読売社説はどう論じたのか。「政府は、放送局の独自性を尊重し、穏当な対応をしてきた。適正な番組作りを放送界の自主努力に委ねる、この流れが根付いてきたことは間違いない」。産経主張は「政府の圧力に日本のメディアが萎縮しているとの指摘は、報道機関として首をひねる」(6月15日)とする。
 日本政府も反論書の中で、「放送における表現の自由や独立性は、放送法の枠組みにおいて適切に確保されており、「脆弱な法的保護」という指摘は当たらない。放送法の解釈及び運用が放送メディアに対する圧力とはなっていない。事実誤認だ」としている。しかし、放送史は、読売・産経や政府の反論とは正反対であること。―― 示している。
 読売・産経が問題とする二点目は、慰安婦について。中学歴史教科書での慰安婦記述の減少は事実。「ケイ報告」は「第二次大戦中の犯罪について学校教育がどう扱うかに関して政府が介入することは、一般市民の知る権利や過去について理解する能力を損なわせる」と指摘し、「学校教材における歴史的出来事の解釈への政府の介入を慎み、第二次大戦中に日本が関わった深刻な犯罪を国民に知らせる努力を支援することを求める」と要請した。
 手元に『日本軍「慰安婦」問題すべての疑問に答えます。』(合同出版)という本がある。編著アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)だ。これには、ある興味深い調査結果が掲載。1993年度、97年度、02年度、06年度、12年度版の中学歴史教科書での慰安婦の記述状況を調査したもの。それによると、慰安所設置への旧日本軍の関与や本人たちの意志に反して行われたことを認める河野談話が、93年に発表されたことを受けて、97年度版は7社全社が掲載。ところが02年度版は8社中→2社に激減。06年度版2社(8社中)、12年度版ついに教科書会社9社から全部消えた。16年度版になって、新たに参入した1社が記述したことで復活する。
 97年は、慰安婦を既述した中学歴史教科書問題のスタートだ。96年には国連人権委員会の特別報告者、ラディカ・クマラスワミ氏が慰安婦に関する調査結果を提出している。しかし、同時に政治は逆方向に動き出す。安倍首相が事務局長、故・中川昭一氏が代表を務める「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」が2月に発足し、年末に『歴史教科書への疑問』(展転社)が出版。同会のメンバーに衛藤衆院議員(幹事長)、高市早苗(幹事長代理)、古屋圭司(副幹事長)、下村博文(事務局次長)、山本一太(同)、菅官房長官(当時→委員)、佐藤勉(同)といった、20年後の安倍政権を支える顔ぶれが名を連ねていた(肩書は当時)。同会の目的について中川氏は、「いわゆる「従軍慰安婦強制連行」を始めとする教科書の記述等を調べる為の研究会」と同署で紹介している。




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