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2017年9月15日 (金)

首相官邸は「メディア真空地帯」 ③

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 権力情報の宝庫である官邸で記者は何を取材しているのか。
 「政治記者の関心は政局で、政策の話をしても記事にならない」。故・加藤紘一氏(宮澤政権時―官房長官)は嘆いていた。官邸に詰めている記者の関心事は、首相が考えていることを探ること、政権の目指す方向、自民党内の力関係、解散や閣僚人事、そうした政局がらみばかりで、行政や政策等の実務への関心は薄い、と。
 その日常は、他社の知らない情報を取り、明日発表されることを今日書くための取材合戦だ。官邸には有力政治家や高級官僚などがいる。番記者は「会ってもらえる関係」「そっと教えてくれる相手」を作りたい。しかし官邸で働く政府要人は、メディアに秘密を漏らすことなどしない。「リーク」は誘導するために行われ、もらった記者はネタ元の意に沿うような記事を書く。
 首相の言い分を他社に先駆けて紹介するNHKの政治部記者も、ワイドショーで首相よりの発言を繰り返すコメンテーターも、官邸に重宝がられ、そっと情報を入手できる。首相が困惑する記事を書けば情報遮断となり、仕事にならない。すり寄るメディアが得する構造を官邸はつくった。程度の差こそあれ、情報をエサに権力の影響下に置かれている。
 メディアが監視するより情報を貰う。そんな姿勢を雄弁に語るのが読売新聞社の社長賞だ。
 『週刊新潮』(2017/07/06号)、によると、読売新聞社は憲法9条改正を明言した「安倍首相インタビュー」(2017/05/03朝刊)、に対して社長賞を贈ったという。政権のメディア戦略とタイアップした大きな記事を書けば評価されるのか。
 首相は読売インタビューでの発言を国会で問われても「自民党総裁としての発言であり、ここで語ることではない」と説明しない「詳しいことが知りたいなら読売新聞を読んで」と答弁した。記事で披瀝した改憲案は、自民党が主張してきたことと違っている。だが聞き手の政治部長は改憲を巡る手順や内容に突っ込んだ質問をせず、言いたいことを言わせるだけ。そんな提灯記事に社長賞を出す報道姿勢が、さらにおぞましい記事を紙面化した。著者(神保)は何度も取り上げている、前川氏の「出会い系バーへの出入り」を報じた記事である。これは、重要な記事の掲載前にその内容が適切かどうか第三者が事前にチェックする、読売新聞社内の適正報道委員会にすら諮られていないらしい(『文芸春秋』8月号)。
 前川氏は官邸の動きと読売の取材は連動していると見ている。「へんな行動をしたら困ることになるぞ」という威嚇に日本最大の新聞が使われた。書かれた側はそう感じている。
 「第四の権力とも言われるメディアまで私物化されたら日本の民主主義はどうなるのか。メディアが自ら考えること」。日本記者クラブでの記者会見で前川氏はそう語った。あれは読売がやったこと、と他人事で済まされないメディア状況になっている。





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