« Science i PS細胞研究の現況と将来 ③ | トップページ | Science i PS細胞研究の現況と将来 ⑤ »

2017年9月 7日 (木)

Science i PS細胞研究の現況と将来 ④

続き:
2)パーキンソン病について

  脳の中には神経細胞が多数含まれており、それらが複雑なネットワークを形成して働いている。どこか神経細胞に不具合があって、伝達がうまくいかないと、体を思ったように動させなくなることもある。

  パーキンソン病は脳神経が出す「体を動かせ」という信号がうまく伝わらず、スムーズに体を動かせなくなる病気である。脳の中にあるドパミン産生神経細胞が何らかの原因で機能不全に陥り、あるいは細胞が脱落し、信号を伝えるために必要なドパミンが産生されなくなる。パーキンソン病の患者さんに処方される薬は存在しているが、いずれも対症療法であり、根本的に脱落してしまった細胞を元に戻すことはできない。例えばL-ドパという薬の場合は、残っているドパミン産生神経にドパミンの材料を与えて、残っている細胞がドパミンの産生量を増やす効果を期待している。また、場合によっては脳の中に電極を埋め込む外科療法(深部脳刺激療法:DBS)も用いられている。こちらも根本的に病気を治すわけではなく、症状の軽減が期待できるとされている。

  こうしたパーキンソン病を根本的に治療するためには、病気の原因となっているドパミン神経細胞を新しく作り、脳の中に移植すると言う方法が考えられる。ヨーロッパでは妊娠中絶をした胎児の脳の細胞を集めてきて、パーキンソン病の患者さんに移植するという研究もおこなわれ、細胞が長期間にわたって生着することが報告されている。胎児細胞は本来のドパミン産生神経細胞だけではなく、他の細胞も含まれていることから、副作用も見られることや、1人の患者さんに移植をするために複数の胎児が必要であり細胞の調達が難しいということ、そしてなにより胎児の細胞を使うことに関して抵抗がある人も多いといった課題を抱えている。こうした課題を解決すべく、CiRAの高橋淳教授らグループは新たな細胞源としてiPS細胞に着目して、ドパミン産生細胞を作って移植する研究を進めている。すでにマウスやサル等を使った研究は実施しており、いずれも良い結果が得られているのだ。まだ被験者の募集などは行われていないが、iPS細胞ストックの細胞を用いて、治験を実施する方向で研究が進められている。





« Science i PS細胞研究の現況と将来 ③ | トップページ | Science i PS細胞研究の現況と将来 ⑤ »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: Science i PS細胞研究の現況と将来 ④:

« Science i PS細胞研究の現況と将来 ③ | トップページ | Science i PS細胞研究の現況と将来 ⑤ »