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2017年9月 6日 (水)

Science i PS細胞研究の現況と将来 ③

続き:
3. 再生医療
 ここではiPS細胞を使った再生医療研究について紹介する。臨床応用が近い研究だけでも、パーキンソン病、眼疾患(網膜・角膜)、心臓疾患など多数あるが、
 iPS細胞を使う再生医療(● CiRAと京大病院で実施 ○CiRAがiPS細胞提供)
          神経細胞――●パーキンソン病
          網膜、角膜細胞――○眼疾患
          心筋細胞――○心臓疾患
          神経幹細胞――○脊髄損傷
          血小板――●輸血
          免疫細胞――○癌
          軟骨――●関節疾患
 1)加齢黄班変性を対象について
  2014年には世界ではじめて、理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーらを中心としたグループがiPS細胞由来の細胞を移植する手術を行い、大きな話題になった。今、日本において、iPS細胞を使った再生医療の研究で最も進んでいるものが、加齢黄班変性を対象とした治療法の開発である。
  ヒトの目は外からの光を一番奥にある網膜で感じ取り、脳に伝える構造になっている。脳にまで電気的信号が届いて初めて「見えた」と感じる。特に網膜の中心の光が最もよく当たる所には黄斑と呼ばれる部分があり、ここは視覚にとって非常に重要な部分である。網膜には、光を受け取ってそれを電気的信号に変換して伝える「感覚網膜(神経網膜)」と、それをサポートする「網膜色素上皮」という組織からできている。網膜色素上皮細胞は感覚網膜への栄養補給や老廃物の処理を行っており、網膜色素上皮の機能が低下すると感覚網膜の機能も低下してしまう。
  加齢に伴って黄斑部にある細胞に障害発生し、目が見えにくくなる病気が加齢黄班変性である。大きく分けると萎縮型と滲出型に分類される。萎縮型は網膜色素上皮細胞が萎縮を起こして感覚網膜が傷害される。滲出型では網膜色素上皮を裏打ちしている脈絡膜から異常な血管が発生して、網膜色素上皮や感覚網膜を傷つけている。
  2014年に行われた臨床研究では、滲出型の患者さんを対象とした。患者さんから採取した細胞を用いてiPS細胞を作製した。さらにiPS細胞から網膜色素上皮細胞のシートを作製し移植手術が行われた。但し、現在のところ1例しか行われていないが、その患者さんは手術後2年程度経過しても特に問題は見られていない。2017年3月には本臨床研究について論文発表が行われ、まだ症例は1例と限られており、治療効果は不明であるものの、本件手術ではiPS細胞を使った移植で安全に行うことができたことを示した。
  2017年2月にはiPS細胞ストック(後)を利用した臨床研究が開始された。こちらの研究では対象は同じく滲出型の加齢黄班変性の患者さんだが、使用する細胞が患者さん自身の細胞ではなく、あらかじめ健康なボランティアの方から作製したiPS細胞ストックを使っている。つまり移植される患者さんにとっては、自分の細胞ではなく他人の細胞ということ。こうした細胞を使うことで、より多くの患者さんに早く安価に移植用の細胞を提供することを目指している。本臨床研究は2017年6月現在では被験者募集を行っている段階で、約3年後に成果が公表されると期待されている。




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