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2017年9月 5日 (火)

Science i PS細胞研究の現況と将来 ②

続き:
2. iPS細胞の可能性について
 皮膚繊維芽細胞に4つの遺伝子(Oct3/4、Sox2、K1f4、c-M yc)を導入し、1ヶ月ほど培養すると、ヒトの胚から取りだして作られるES細胞(胚性幹細胞:Embryonic Stem cell)と同様の自己増殖能と分化多能性を持つ細胞が得られた。この細胞をiPS細胞と命名し、マウスiPS細胞2006年に、ヒトiPS細胞は2007年に、それぞれ論文として発表した。ES細胞と比較して、将来1人のヒトとなり得る胚を使用しないことから、細胞を作る際の倫理的な障壁が一つなくなり、多くの人々に受け入れられた。また、iPS細胞は患者さん自身から作ることができるため、細胞移植治療を行う際には拒絶反応が少ない自家移植を実施できる。さらに実在する1人のヒトと全く同じゲノムを持っていることになるため、他人の細胞を移植する場合でも、その細胞を持っていたヒトの健康情報なども得られるために、より安心・安全な細胞を選ぶことが出来ると考えられる。
 当初は作製の過程で導入する遺伝子に、がん遺伝子としてよく知られている c-Myc を使っていることや、遺伝子を導入するベクターとして、もともとの細胞の遺伝子に傷をつける可能性があるレトロウイルスを使用していたことから、腫瘍形成の懸念が指摘されていた。我々の研究グループはc-Myc の代わりに L-Myc を使い、他にも2つの遺伝子を追加した6種類の遺伝子を使う方法とした。また、ベクターとしてレトロウイルスの代わりにエピソーマルプラスミドを用いて、細胞の遺伝子に傷をつけないようにしている。エピソーマルプラスミドはiPS細胞が活発に細胞分裂することで次第にエピソーマルプラスミドを含まない細胞の割合が多くなり、最終的には導入した遺伝子が残っていないものを選ぶことができる。こうした改良を行うことで、がん化のリスクを大きく減らし、医療現場でも使えるような技術になってきている。現在医療用のiPS細胞ストックをCiRAで作製する際にはこちらの方法を使用している。
 iPS細胞は自己増殖能と分化多能性という特徴を活かして、大きく2つの分野で活躍できるのではないかと考えられている。 1つは失われた細胞の機能を補うために、体の外から必要な細胞を補うことで症状の改善を試みる再生医療だ。またもう 1つは、iPS細胞を使って薬の毒性を調べたり、あるいは難病に対する新しい治療法を開発したりする、創薬研究である。




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