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2017年9月 9日 (土)

Science i PS細胞研究の現況と将来 ⑥

続き:
4) 再生医療用iPS細胞ストック
  iPS細胞の利点の一つに、患者さん自身から細胞を作ることが出来ると言う点がある。2014年に行われた世界初の移植手術は、加齢黄班変性の患者さん自身から作製したiPS細胞を用いて必要な細胞(ここでは網膜色素上皮細胞)を作製し、移植に使用した。この方法では患者さん自身の細胞を使うため、移植の際に免疫拒絶反応が起こることはない。しかし、2014年の例では、iPS細胞を経由して安全性を検討した移植用の細胞を得るまでに1年近くの時間と1億円近い費用が必要だった。
  しかし、このような時間と高額な費用がかかっていては多くの患者さんに実際に使ってもらえるような治療法とするのは難しい。そこで少しでもそうした時間と費用を抑えるために、CiRAではiPS細胞ストックという計画を進めている。患者さん自身の細胞から移植する細胞作る自家移植がオーダーメイドであれば、iPS細胞ストックを使った他家移植はレディメイドといえる。健康なボランティアの方からある程度多くの人が利用できるiPS細胞をあらかじめ作製し、必要な検査を済ませた段階で保存しておくというものである。これにより、少なくともiPS細胞を作製するところまでの過程を省略することができるので、その部分にかかる費用と時間を節約できる。
  細胞を移植する場合には細胞の型であるHLAのタイプが一つの問題としてある。HLA型が異なる細胞を移植すると、患者さんの体内の免疫が移植した細胞を異物と認識して生着できない可能性がある。そこで我々は特殊なHLA型を持つ細胞に着目した。HLAホモと呼ばれる細胞で、両親から全く同じHLA型を遺伝した細胞である。こうした細胞を持っている人が日本人では100人に1人程度の割合で存在している。こうした細胞は、2本あるHLA遺伝子の内、どちらかが一致する細胞を持つ型であれば、拒絶反応が少なく移植できると考えられている。
  日本人に最も多いタイプのHLA型をホモに持つ細胞を使えば、日本人の17%に移植することができると考えられている。現在は日赤などに協力していただき、血小板輸血のドナーや、骨髄バンクのドナー、臍帯血の提供者の中から、HLAホモの細胞を持つ人をリクルートし、iPS細胞の作製を進めている。CiRAではすでにHLA型の異なる2種類のiPS細胞を提供しており、合計24%の日本人に移植可能である。どこまで多くのiPS細胞をストックしておくべきか今後さらなる検証が必要だが、当面は今年度末までに日本人の30%をカバー出来るように進める予定だ。
  こうして作られたiPS細胞ストックは、研究機関・医療機関に必要に応じて提供され、それぞれ必要な細胞へ分化させた上で移植に利用される。




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