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2017年10月12日 (木)

Clinical 口臭と口臭症患者を理解するため ①

福田光男(愛知学院大学歯学部教授)さんの臨床講座の研究文をコピー・ペー :,
1.  はじめに
 口臭は、歯周病や、排膿を伴う根尖性歯周炎などの疾患に随伴する症状の一つである。しかし、口臭ガス成分そのもの、人体に、害を及ぼすレベルの濃度が検出されないため、これまで歯科学の中で積極的には扱われてこなかった。
 一方、近年社会全体の清潔志向が強まり、生活の場の清潔さの一要因として「におい」が位置づけられつつあり、口臭を気にする人が増加してきている。中には、自ら発する口臭が原因で他人から疎まれているのではと思い悩み、人と一緒に行動できない人や、映画館などで楽しめないと訴える人、引きこもりや登校拒否など通常の社会生活に支障をきたしている人も増加しており、歯科での積極的な対応が必要とされるようになったきている。
2.  口臭、口臭症の定義
 口臭を訴える患者の中には、客観的口臭が感じられないにもかかわらず口臭が有るのだと確信している人がいる。こうした人の訴えを理解するには、口臭の定義から考え直す必要がある。
 従来、口臭は「口からの呼気臭が第三者に不快と感じられるもの」と定義されてきた。この第三者に感じられる不快な臭気と定義すると、「口臭が気になります」といって患者が来院した際、第三者である歯科医(術者)が臭いを感じなければ、口臭が無いと判断し、「口臭は有りません」と診断してその場は終わることになる。
 一方、口臭があるのではないか、もしくはあるに違いないと思い煩って来院した患者にしてみれば、「え?ないの? そんなはずないけれど……」という疑問が残るだけである。自分で口臭があるはずだと感じている、あるいは信じて疑わない患者にとって、「口臭とは、第三者が不快と感じられるもの」という定義は、受け入れられないのである。歯科医側からすると、患者がなぜ口臭を訴えて来院するのが理解できない。つまり、双方が理解できない壁ができて、治療のスタートラインに着くことすらできない。そこで、口臭と口臭症を以下のように定義することが提案されている。
 ・口臭とは、本人あるいは第三者が不快と感じる呼気の総称である。
 ・口臭症とは、生理的・器質的(身体的)・精神的な原因により口臭に対して不安を感じ
  る症状である。
 口臭は、本人が感じるものを加え、患者の口臭に対する強い拘りを理解すると、器機での口臭測定や官能検査で口臭を感じられなくても、なぜ患者が来院するのか、何を求めているのかへの対応が可能となる。勿論、口臭症患者の治療では、患者が普段から疑問に思っている口臭発生に対する機序や、口臭に対する疑問に対して答えるだけの基礎的な知識は欠かせないのである。
3.  口臭と口臭の発生源
1)口臭物質とは?
 自分の口臭(生理的、病的問わず)がどのような臭いか、表現できる人は少ない。患者の訴えを聞くと、「野菜が腐ったような臭い」とか「どぶのような臭い」、「酸っぱいような臭い」などと感じているか、あるいは他人からそのように言われていることが多いようである。
 口臭の成分については、1970年代から分析され、結果は、硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドといった揮発性硫黄化合物、アンモニア、インドール、スカトールといった揮発性窒素化合物、プロピオン酸、イソ吉草酸といった低級脂肪酸などが同定されている。その中でも、比較的濃度が高く、高頻度で検出されるのは、揮発性硫黄化合物(volatile sulfur compounds:  VSCs)だ。硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドがこれに当てはまる。
 現在、器機を使った口臭測定では、これらの化学物質を指標にしている。これらの成分は人により、また、測定時間によって微妙に変化する(起床時に高く、食後で減少するなど)。硫化水素だけが検出される場合もあれば、メチルメルカプタンも合わせて検出されることもありさまざまである。このVSCsにその他の微量な成分が混入し、独特の口臭になる。香水が様々な成分をブレンドして独特の匂いとなるように、不快な臭いも、これらの成分が口腔の湿気とも混合されて独特な臭いとなる。香水も人によって好みがあるように、快不快の感じ方にも個人差がある。また、臭気に対する感覚なので、人によって口臭成分ごとに感受性(認知閾値)に差がある。例えば、硫化水素の認知閾値は112ppbあるが、人によってはこれより閾値が低い。このように検査者(医師・歯科医)により閾値が異なるため、人の鼻で口臭を判定する官能検査では、必ず複数の人による判定が必要となる。また、検査者と患者との距離も重要になってくる。





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