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2017年11月27日 (月)

ファクトチェックの現在 ④

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 アジアからも、多くはないが、いくつかの団体が参加していた。その一つは、フィリピンの「ヴェラ・ファイルズ」。フィリピン大学のイヴァン・チュア准教授が主宰する団体だ。チュア准教授によると、常駐スタッフは5人いて月に8本のペースでファクトチェックの結果をオンラインで発表。2016年のフィリピン大統領選挙でその存在が注目されたそうだ。

 「今のドゥテルテ大統領が当選した選挙では、様々な情報がネット上で乱れ飛びました。新聞はそうした発言をいうだけで、真偽の確認に力を入れなかった。このため、私たちの活動に注目が集まった」

 団体は寄付によって成り立つNPOだ。スタッフ5人を雇うだけの資金は集まっているのだろうか?それを問うと、途上国を対象とした米政府による民主化支援プログラムである「全米民主主義基金」(NED)~7万ドルの寄付を得た。つまり米国政府から支援を受けていること。これでは活動に支障がでないのか?

 「もちろん、資金を得たから米政府に対して問題を指摘しないということはあり得ません。その点は寄付を得る際にも確認しています。それに、NEDの支援だけで活動しているわけではないし、ボランティアで参加する学生によって支えられる」

 注目を集めたアジアの国もあった。韓国だ。2017年1月にソウル大学にファクトチェック団体が立ち上がり、そこに新聞、放送、ネットメディアの各社が参加する仕組みでできたという。ソウル大学の名称からSNUファクトチェック・センター(SNUセンター)と名付けられた団体だ。事務局長を務めるチョン・ウンリョンさんが大会に参加していた。

 チョン事務局長は話した。

 「韓国でファクトチェックが盛んに行われるようになったきっかけは、パク・クネ前大統領の疑惑~弾劾に至るプロセスでした。ネット上でパク氏を支持する側と批判する側とが入り乱れ、様々なフェイクニュースが流されたため、その真偽を確認する必要があったからです」

 当初は各メディアがそれぞれファクトチェックを行って独自に発表していたという。ところが、2017年3月の大統領選挙に向けて、SNUセンターができ、そこに公共放送KBSをはじめ大手新聞社が参加する仕組みができたということだ。チョン事務局長はその理由を説明した。

 「メディア各社との交渉は大変だった。しかし、各社とも独自で行うファクトチェックには限界を感じていました。それが本当に正しいか、という疑問が突きつけられるから。KBS、MBC、YTNといった大手放送局、東亜日報、朝鮮日報、ハンギョレ新聞といった大手新聞社、そしてオーマイニュースのようなネットメディアも入っている。

 チョン事務局長は、東亜日報の記者だった。20年記者をやった後に、ソウル大学のコミュニケーション調査研究所の研究員となり、それが縁で事務局長に指名されたのだという。興味深い話をした。

 「パク・クネ前大統領の疑惑の時に懸念されたのは捜査機関の動きでした。フェイクニュースを放置しておくと、国家権力がネットの内容に介入する状況が生まれ、このままでは、表現、言論の自由も脅かされる事態になりかねないという懸念が生じたのです」

 その結果、大学のつくった枠組みに大手メディアの多くが参加するというファクトチェックの仕組みができたということだった。

 フェイスブックやグーグルがファクトチェックと連携する動きを見せていることを書いたが、韓国でも同じ動きが起きているという。ネット企業が3年間にわたって日本円にして合計3億円を寄付すると発表している。チョン事務局長はこうした資金を使ってファクトチェックの仕組みを更に充実させたいと話した。

 




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