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2017年11月23日 (木)

ファクトチェックの現在 ①

立岩陽一郎(NPO「アイアジア」編集長)さんの「世界 11」よりコピー・ペー :

 「トランプはファクトチェックのスターだ」

 壇上に立つベテランのジャーナリストが少しおどけた表情でこう話すと、場内から苦笑いに似た笑いが漏れた。2017/06/22、~06/25、にわたってアリゾナ州フェニックスで開かれた全米調査報道記者・編集長協会(IRE)の大会での一コマだ。

 ファクトチェック。日本ではまだ聞き慣れない言葉かもしれない。このファクトチェックとは、政治家など公的な立場の人間が発する言葉やネット上に流れる様々な情報について事実か否かを確認し、その結果を指摘する作業のことだ。嘘の情報を意図的に流すフェイクニュースがネット上などにあふれる中で、それに対抗する手段として出てきたもので、近年、欧米を中心に活発に行われている。

 全米から1600人ものジャーナリストやメディア研究者を集めて行われたこの大会でも、ファクトチェックは主要なテーマとなっていた。

 冒頭の発言をしたのはファクトチェックを専門に行う団体「ポリティファクト」でデスクを務めるニール・ブラウン氏。ブラウン氏は続けた。

 「我々がファクトチェックをしていて驚くのは、この国の最高権力者の発言の多くが事実と異なるということだ」

 聴衆の一人として話を聴きながら、パソコンで「ポリティファクト」の画面を開いてみた。そこには、トランプ大統領に関するファクトチェックが書かれたいる。

 True(真実) 5%

 Mostly True(ほとんど真実) 12%

 Half True(半分真実) 14%

 Mostly False(ほとんど嘘) 21%

 False(嘘) 33%

 Pants on Fire (全くの嘘、はったり) 15%

 確かに、「ほとんど嘘」から「全くの嘘」まで合算すると発言している事が70%近くなる。これに、「真実半分」を加えたら、事実と違う内容を含んだ発言は80%を超えているという計算になってしまう。

 なるほど、「ファクトチェックのスター」とは、言い得て妙だと思った。

 壇上を降りたブラウン氏に話をきいた。名刺を見て意外に感じたのは、ブラウン氏がフロリダにある地方紙のタンパベイ・タイムズ紙の副社長という肩書を持っていたことだ。しかし、ブラウン氏の説明を聞いて納得した。

 「ポリティファクト」はタンパベイ・タイムズ紙が立ち上げた団体なんです。だから、この団体でファクトチェックを担っているのはうちの新聞社の記者やデスクです」

 この団体の存在は全米に知られている。全米の活字メディアを対象とした最高峰の賞とされるピュリッツァー賞も受賞している(2009年).。

 そのきっかけは、2007年の大統領選挙だったという。

 「民主党の予備選挙でオバマとヒラリーがデッドヒートを繰り広げていて、二人がフロリダに来ることになっていた。フロリダは常に大統領選挙でキャスティングボードを握る場所で、重要だ。そしてうちの新聞社のテリトリーだ」

 通常は候補者に張り付いて情勢を伝えるのだが、それはどこもやるので同じ記事になってしまう。米国のメディアは他社と同じ紙面になることを嫌うところがある。そこで、ブラウン氏が提案したのが、記者が候補者に物理的に張り付くのではなく、候補者の話に張り付くというものだった。

 候補者の発言は全てテレビで報じられる。それをチェックして、事実かどうかを確認して記事にしたのだ。

 「読者からの反響は良く、それは本選挙でも続けることになった。あまり評判が良いので、専門のグループをつくり、それを更に専門の団体として独立させたんだ。ただ、独立させたと言っても、新聞社から人を出すという形になっている」

 ファクトチェックの取り組み自体は、ブラウン氏らが考え出したものではない。ファクトチェックを専門にする団体は、2007年の段階で既に複数活動を始めていた。それが大きな成果を出して注目されたのがブラウン氏らの取り組みだったということだ。



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