« ファクトチェックの現在 ① | トップページ | ファクトチェックの現在 ③ »

2017年11月24日 (金)

ファクトチェックの現在 ②

続き:

 米国では他にもワシントン・ポスト紙のファクトチェックが有名だ。嘘をつくと鼻が伸びるピノキオを使ってその真実度(嘘度?)を示す。例えば「4ピノキオ」(ピノキオ度4)が「ポリティファクト」の「全くの嘘、はったり」に当たる。『世界 9』では、同紙のロバート・バーンズ上級記者が話していたように、ワシントン・ポスト紙にはファクトチェックを専門にする記者が二人いて、大物政治家の発言などをチェックしている。二人だけでファクトチェックというのは可能なのだろうか?担当の一人、ミッシェル・リー記者と話す機会があった際に尋ねてみた。

 「私たちが言っているのは、「ファクトチェックをするのは読者の皆さんです」ということです。読者から「この議員のこの発言おかしいんじゃないか」といった情報を寄せてもらい、それを調べるのです。勿論、私たちで最初から調べることもありますが、読者の協力なしには続かないと思います」

 リー記者は以前はアリゾナ州の地方紙で調査報道記者をしていたという。調査報道とは、政府の発表などに頼らずジャーナリストが情報公開制度を駆使するなどして事実を掘り下げる取材方法のことだ。米国では調査報道を行なう記者が最高評価を受ける。

 リー記者は、「ファクトチェックは、数ある情報の中から問題を見つけて掘り下げる。そしてその結果を伝える。これはある意味では調査報道と同じだと考えている」と話した。

 米国の大会から二週間後の7月3日、スペインのマドリッドでファクトチェックの世界大会が開催された。

 市内のグーグルの施設には、様々な国から参加者があった。主催した「国際ファクトチェック・ネットワーク」(IFCN)によると、53カ国から、188人が参加したという。欧州各国は勿論、北米、中南米からの参加者も目立った。

 開会宣言したのはイタリア人でIFCN代表のアレクシオス・マンツゥアレス氏。

 「この大会は4回目(今回)ですが、これだけの参加者になったことを喜びたい。ファクトチェックが世界に広がっていることを示している。今回、前回を上回る参加者になった。この機会に多くのことを学び、そしてそれぞれの国に戻って多くの人にその重要性を伝えて欲しい」

 集まった人々を見渡して、まず、参加者の若さにおどろいた。その多くが30代から40代の前半、20代とおぼしき若者も多数いた。開会を宣言したマンツゥアレス氏も28歳だ。女性が多いのも特徴だった。女性の比率は半数を超える状況だったが、単純に女性参加者が多かっただけではない。3日間で20余りのセミナーが開かれたが、そこで演壇に立つ、つまり指導的な役割を担う人の多くが女性だったのだ。

 英国でファクトチェックを行ってきた「ファースト・ドラフト」の代表も女性で、クレア・ワーデルさん。この団体は、特にネット上における情報の真偽の確認に力を入れていると話した。

 「最近では、英国の総選挙についての報道やネット情報をチェックしました。英国の選挙では、米国の大統領選挙のようにフェイクニュースのためのサイトが嘘のニュースを流すという現象はまだ起きていませんが、それでも、見出しを誇張するなどしたミスリーディングな情報がかなりある。それらの問題を集中的に指摘しました」

 「フル・ファクト」も英国を代表するファクトチェックをの団体だ。ウェブサイトの運営責任者を務めるメバン・ババカーさんも女性である。彼女は、「フル・ファクト」の存在を英国政府も無視できなくなっている、と自信を示した。

 「私たちはファクトチェックをするだけでなく、その結果を相手に伝えて修正を求めています。デビッド・キャメロン前首相はその結果、コメントを何度か修正しています」

 実は、彼女たちはいずれもジャーナリストとしての経歴を持っていなかった。欧州の参加者と話をしていて、ファクトチェックの担い手の多くがジャーナリスト出身でないことに気づかされた。

 大会を主宰したマンツゥアレス氏もジャーナリストではない。彼は、元々、国連職員だった。

 「たしかに、私はジャーナリストの経験を積んでいません。いま、私をジャーナリストと呼ぶメディアもありますが、私はジャーナリストではない。ファクトチェックという活動をするのに、ジャーナリストの経験があれば良いとは思いますが、絶対条件ではありません」

 ではマンツゥアレス氏は何になるのか?

 「ファクトチェッカーです。それでいいんです。あまり聞き慣れない肩書かもしれませんが、これで通用します。ここに集まっている人々は、みなファクトチェッカーです」

 様々なセミナーが開かれた大会で、特に注目を浴びたのはフェイスブック、グーグル、ウィキペディアからの参加者だった。これらのネットメディアはフェイクニュース対策に追われている。




« ファクトチェックの現在 ① | トップページ | ファクトチェックの現在 ③ »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ファクトチェックの現在 ②:

« ファクトチェックの現在 ① | トップページ | ファクトチェックの現在 ③ »