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2017年12月 8日 (金)

Clinical 口腔感染制御が医科歯科と社会を結ぶ ③

続き:
 症例2は、発熱とともに急激な血糖上昇を認めている。これは、糖尿病患者が肺炎や腎盂腎炎などの感染症を併発した際に、よくみられる現象であり、その背景には”大きな炎症”が存在している。一方、糖尿病と歯周病はいずれも”小さな炎症”であり、炎症という共通した病態を通して、密接に関わり合っている。
 歯周病は細菌感染による歯周組織の慢性微小炎症あるが、2型糖尿病もまた脂肪細胞が脂質を過剰に貯め込み、脂肪組織で慢性微小炎症を引き起こすことが、原因の一つであると考えられている。
 両者に共通する慢性微小炎症は、炎症性サイトカインの分泌を通じてインスリン抵抗性(インスリンの効果が減弱する)を惹起し、結果として血糖値を上昇させる。肺炎や骨髄炎に比べれば、歯周病はごく軽微な炎症だが、長期にわたって持続する点において、糖代謝にとってはより大きな脅威となる点が重要である。
 糖尿病と歯周病が、炎症で密接に結ばれていることを象徴する一例については、本レポート上でもすでに紹介している。簡潔にその要点を掲せる。
症例3
 42歳の男性。外来でインスリン治療を受けていたが、HbA 1c 10%台を持続するため、糖尿病内科に入院した。
 入院当日、研修医師が行った問診から「毎朝歯茎からの出血で枕が赤く染まる」ことが明らかになり、直ちに歯科口腔外科で歯周基本治療が行われた。入院当初は、エネルギー制限食とインスリン頻回注射を行っていたにも関わらず、血糖日内変動は200~300 mg/dL と高値で推移していたが、歯周基本治療が完了した頃から、血糖値は急速に改善し、インスリン投与量は減少。入院12日後にはインスリンが不要となり、内服薬のみで退院した。
 退院後の変化は、さらに驚くべきものであった。わずか1か月で、HbA 1cは10.5%から7.8%まで改善し、体内の炎症状態を表す血清 CRP(C Reactive Protein : C反応性蛋白)は、入院時の0.35mg/dLから0.16mg/dL まで半減していた。歯周基本治療により”慢性微小炎症が消退”した結果、インスリン抵抗性が減弱し、高血糖が改善したものと考えられる。
 症例3は、口腔感染制御が”口腔炎症制御”を通じて、医科の想像をはるかに超える”代謝の改善”をもたらし得ることを教えている。
 この他にも、口腔感染症は震災後の誤嚥性肺炎をはじめとして、早期低体重児出産、死産、耳鼻咽喉科領域における致死的感染症であるLemierre 症候群など、驚くほど広範囲かつ甚大な影響を人体に与えている。





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